第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-2】

疫学

地域在住高齢者の頭部MRI画像分析;田尻プロジェクト報告(2)
    
 

東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学・田尻町スキップセンター・国保診療所
石井洋
東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学
目黒謙一 山口智 石崎淳一 佐藤真理
橋本竜作 島田洋一 島田真須美 山鳥重
東北大学大学院経済学研究科福祉経済設計学
目黒光恵 関田康慶
  

【背景と目的】田尻プロジェクト報告(1)に引き続き,同プロジェクトにおいて施行された地域在住高齢者の頭部MRI画像の分析を行った.われわれは96年の調査での頭部MRIの分析からCDR 0.5群において海馬の萎縮が加齢による変化と変性性の変化を考えさせる二峰性の分布を示していることを報告した(Arch Gerontol Geriatr, 29:249,1999).今回,さらに詳細な分析を行った.


【対象と方法】
田尻町有病率調査において65歳以上の高齢者399名に施行された頭部MRI画像から各所見の有病率を同定し,また内科疾患や認知機能障害との関連性を統計学的に検討した.


【結果】
(1)MRI画像所見;ラクナ梗塞のみ20.6%,PVHのみ15.1%,ラクナ梗塞とPVHの合併12.1%,脳梗塞7.3%,その他15.8%.(2)無症候性脳梗塞;有病率23.8%.(3)内科疾患とMRI所見;高血圧とラクナ梗塞・PVH,一過性脳虚血発作とラクナ梗塞の間に有意な関連性を認めた.(4)MRI所見と認知機能障害;PVH・前頭葉萎縮・頭頂葉萎縮・側頭葉萎縮・海馬萎縮(とくに側頭葉と海馬)と痴呆の間に有意な関連性を認めた.


【考察】
今回の調査においてラクナ梗塞・PVH・脳梗塞等の所見を合計すると55.1%と半数を超えており,すべてが病的意義をもつものとは思われないが,加齢との関係を含めて,その意義を検討すべきものと考えられた.MRI所見と認知機能障害の関係ではPVHや側頭葉・海馬の萎縮と痴呆の間に強い関連性が認められ,それぞれVDとADを示唆する結果と考えられた.CDR 0.5群については加齢による変化だけでは説明できない所見が認められ考察を加えた.

2001/06/13


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