第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I B-1】

疫学

地域在住高齢者における痴呆の有病率と原因疾患;田尻プロジェクト報告(1)
    
 

東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学
目黒謙一 山口智 石崎淳一 佐藤真理
橋本竜作 島田洋一 島田真須美 山鳥重
東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学・田尻町スキップセンター・国保診療所
石井洋
東北大学大学院経済学研究科福祉経済設計学
目黒光恵 関田康慶
  

【背景と目的】東北大学のわれわれのグループと宮城県田尻町は共同で,1990年より脳卒中・痴呆・寝たきり予防プロジェクトを展開してきた.われわれは96年,無作為抽出したMRI施行高齢者170名の検討から,65歳以上の高齢者全体における痴呆の有病率が8.0%であることを報告した(Arch Gerontol Geriatr,29:249,1999).今回さらに詳細な調査を施行した.


【対象と方法】
宮城県田尻町在住の65歳以上の在宅高齢者で,80歳未満を層化無作為抽出法,80歳以上を全数調査法により対象者を設定した.痴呆の診断はDSM-IVに準拠し,原因疾患はNINCDS-ADRDA (probable AD)およびNINDS-AIREN(Vascular Dem-^nentiaおよびpossible AD with CVD)に基づいて診断した.重症度判定はCDRを用いた.


【結果】
560名にMRIを含む詳細な検査を,計920名に面接調査を施行.痴呆の有病率は全体で8.0-9.6%,痴呆疑い(CDR 0.5)は28.3-28.7%であった.痴呆の原因疾患としては,possible AD with CVDが最も多く,次いでprobable AD,VaDの順であった.また少ないものの低酸素脳症による痴呆状態を発見し,酸素療法にて脳血流と認知機能の改善をみた.


【考察】
痴呆の有病率は96年の報告と一致した.原因疾患としてはpossible AD with CVDが多く,以前VaDとoverdiagnosisされていた可能性が否定できない.また比較的多く認められたCDR 0.5群に対し介入を行い認知機能の改善をみているが,今後地域で展開する予定である.また低酸素脳症などのようなreversible dementiaを見逃さないような地域における保健・医療・福祉の連携システムが必要である.

2001/06/13


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