【背景と目的】東北大学のわれわれのグループと宮城県田尻町は共同で,1990年より脳卒中・痴呆・寝たきり予防プロジェクトを展開してきた.われわれは96年,無作為抽出したMRI施行高齢者170名の検討から,65歳以上の高齢者全体における痴呆の有病率が8.0%であることを報告した(Arch Gerontol Geriatr,29:249,1999).今回さらに詳細な調査を施行した.
【対象と方法】宮城県田尻町在住の65歳以上の在宅高齢者で,80歳未満を層化無作為抽出法,80歳以上を全数調査法により対象者を設定した.痴呆の診断はDSM-IVに準拠し,原因疾患はNINCDS-ADRDA (probable AD)およびNINDS-AIREN(Vascular
Dem-^nentiaおよびpossible AD with CVD)に基づいて診断した.重症度判定はCDRを用いた.
【結果】560名にMRIを含む詳細な検査を,計920名に面接調査を施行.痴呆の有病率は全体で8.0-9.6%,痴呆疑い(CDR 0.5)は28.3-28.7%であった.痴呆の原因疾患としては,possible AD with CVDが最も多く,次いでprobable AD,VaDの順であった.また少ないものの低酸素脳症による痴呆状態を発見し,酸素療法にて脳血流と認知機能の改善をみた.
【考察】痴呆の有病率は96年の報告と一致した.原因疾患としてはpossible AD with CVDが多く,以前VaDとoverdiagnosisされていた可能性が否定できない.また比較的多く認められたCDR 0.5群に対し介入を行い認知機能の改善をみているが,今後地域で展開する予定である.また低酸素脳症などのようなreversible dementiaを見逃さないような地域における保健・医療・福祉の連携システムが必要である.
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