第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I A-11】

症状学

遺伝性皮質下血管性痴呆(疑)の1臨床例
  
 

大阪大学大学院医学系研究科神経機能医学講座
池尻義隆 八田直己 上間武 西川隆 武田雅俊
  

 遺伝性血管性皮質下痴呆が疑われる臨床例を経験したので報告する.


【症例】64歳,右利き,女性.高卒,主婦.60歳ころから調理ができにくくなり,62歳ころからもの忘れに気づかれ,A病院を受診し多発性脳梗塞を指摘された.その後,見当識障害や意欲低下が目立つようになり当科受診.神経学的には明らかな筋固縮や筋力低下,腱反射亢進はないが歩行がやや小刻みであった.認知面では記憶・見当識・注意・構成の障害を認め,WAIS-RはVIQ 81,PIQ 57,WMS-R言語性記憶指数73,視覚性記憶指数50以下,注意・集中57,遅延再生52であった.頭部MRIでは両側基底核や皮質下白質びまん性に虚血性病変を認め,99mTc-HMPAO SPECTでは大脳皮質全般にわたり血流低下を認めた.喫煙歴はなく,既往歴に高脂血症はあるが糖尿病,高血圧の既往はない.時に頭痛がある.壮年期から禿頭があるが腰痛はない.家族歴では母が50歳で脳卒中にて死亡.同胞7人中第3子2女が多発性脳梗塞にて50歳ころから寝たきりで,第4子3女は無症候であるが頭部MRIにて多発性脳梗塞を指摘されている.


【結論】脳血管障害危険因子の少ない虚血性脳血管障害例については,十分な家族歴および病歴の聴取が必要である.

2001/06/13


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