第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I A-10】

症状学

高齢者の痴呆症状と合併症についての一考察
  
 

医療法人桜珠会可也病院  栗田輝久
  

 平成12年4月より,介護保険が導入され高齢者の自宅および施設での介護に関心が集まっている.しかし実際に高齢者介護を始めると,さまざまな問題が表出し,介護者の手を必要としてくる.そのなかのひとつに,健康の問題がある.ホームページのなかで“高齢者の健康”について検索すると,高血圧,糖尿病,心疾患などの病名が多くみられ,みんなの関心の高さをうかがわせる.健康状態は年齢が高くなるにつれて悪くなり,高齢期には,さまざまな自覚症状をもちながらの生活,あるいは病気を患った生活となる者が多い.65歳以上の高齢者では,約半数強が何らかの自覚症状をもち,また通院しているという状況である.通院が生活の一部に組み込まれたり,入院生活を送る者も多くなる.高齢者の病気は,生理的変化とそれに伴う疾患が相互に影響しながら存在しているために,1.発症の時期や原因が不明で,全身的,局所的な反応が少ないこと,2.複数の病気を同時にもち,慢性化しやすいこと,3.急性の合併症が多いこと,4.過度の安静や持続的な臥床の弊害が存在するため,早期のリハビリが必要であること,5.少量の薬物で過鎮静が認められることなどが特徴としてあげられると思われる.


 筆者の勤務する可也病院は,重度痴呆治療病棟と,合併症病棟を併設しているために,近在の老人施設や家庭から身体疾患をもつ痴呆患者が治療目的で入院となることが多い.そのなかでも重度の合併症をもつ場合は,病気理解や病気の受け入れがスムーズにできず,抑うつ症状を呈したり,時には暴力行為に至ることもみられる.なかには安静理解ができないため,高熱にもかかわらず徘徊を繰り返し症状を悪化させ非常に重篤な状態に陥る例もみられる.
 この現象は,当院だけではなく他の医療機関でも頭を抱えさせる問題となっていることと思われる.
 今回の学会では,平成12年に,当院の両病棟に入院した約200名の痴呆患者について,併発する身体疾患の種類,程度,病気理解から引き起こされる精神的問題について,診療記録をもとに調査,検討した結果を,若干の考察を含め報告する予定である.

2001/06/13


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