第16回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【I A-7】

症状学

痴呆患者における低ナトリウム血症について
 

湘南さくら病院・横浜市立大学医学部精神医学教室  角田貞治
横浜市立大学医学部精神医学教室  井関栄三 小阪憲司
  

 ナトリウムは生体の水・電解質代謝にとって最も重要な成分のひとつである.痴呆患者の電解質代謝異常に関しては,老年者一般にみられる加齢変化による腎の機能低下に加え,アルツハイマー型痴呆患者ではバゾプレッシンの分泌能の低下による機能異常も加わっていることが指摘されている.また,Larsonらは可逆性痴呆のなかに低Na血症による脳症が含まれていることを報告している.今回われわれは,低Na血症を呈した痴呆患者4症例を経験した.症例1 86歳,男,アルツハイマー型痴呆.徐々にADLが低下し,低Na血症(127.5mEq/l)を呈した.症例2 65歳,男,前頭側頭型痴呆.不機嫌状態がみられ,低Na血症(133.5mEq/l)を呈した.症例3 73歳,男,脳血管性痴呆.徐々に自発性が低下し,低Na血症(125mEq/l)を呈した.症例4 86歳,男,びまん性レビー小体病.夜間せん妄がみられ,低Na血症(127.5mEq/l)を呈した.各症例の電解質代謝異常の鑑別には,スポット尿による尿中電解質濃度・尿中クレアチニン濃度を測定し,部分排泄率を算出した.低Na血症を呈した痴呆患者は,1)徐々にADL・自発性が低下していく一群(症例1,3),2)不機嫌状態,またせん妄の増悪と精神症状が出現する一群(症例2,4)とがみられた.また,部分排泄率を算出することは,多飲水による影響を鑑別するうえでも有用であることを指摘した.

2001/06/13


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