第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-15】
生化学・遺伝
孤発性アルツハイマー病とα2マクログロブリン
遺伝子I1000V多型の関連について
  

順天堂大学医学部精神医学教室  柴田展人,大沼 徹,高橋 正,新井平伊
自治医科大学付属大宮医療センター神経科  大塚恵美子,植木 彰
長尾病院精神科  長尾正嗣
    

【はじめに】プロテアーゼ阻害物質であるα2マクログロブリンはβアミロイドの代謝に関与し,アルツハイマー病発症との関連が示唆されている.α2マクログロブリン遺伝子(A2M)exon23には多型がみられ,Liao Aらによってアルツハイマー病の危険因子であると報告された.今回われわれはPCR-RFLP法により本邦におけるA2M I1000V多型と孤発性アルツハイマー病との関連を調査した.
【対象】対象は演者らの所属する医療機関の外来および入院患者で,NINCDS-ADRDAによって臨床的に診断された孤発性アルツハイマー病111症例と,年齢をマッチングさせた正常対照者95例である.対象者には本研究の主旨,目的について十分説明し,文章による同意を得た.
【方法】対象者の末梢静脈血を採取し,標準的方法により白血球からgenomic DNA(gDNA)を抽出した.Liao Aらの報告によるPCR法を一部改変し,exon23-24領域の増幅を行った.次いでVal1000(GTC)→Ile1000(ATC)を識別するため制限酵素Mbo IによりPCR産物を切断し,2%アガロースゲル上で電気泳動を行い,エチジウムブロマイド染色により可視化し,各遺伝子型および対立遺伝子を決定した.
【結果】孤発性アルツハイマー病症例群と正常対照群の両群の比較ではA2M I1000V多型頻度には有意差は認められなかった(χ2乗検定).またわれわれはすでに本邦における孤発性アルツハイマー病とA2M5塩基欠損多型(A2M-2対立遺伝子)との相関について報告している.発表当日はこのA2M遺伝子の2つの遺伝子多型間の関連について,またアポリポタンパクE遺伝子多型との関連についても検討した結果を呈示する予定である.

2000/07/06


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