第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-14】
生化学・遺伝
プレセニリン1変異導入細胞における小胞体ストレス反応の
変化について
   

大阪大学大学院医学系研究科・生体統合医学神経機能医学  工藤 喬,武田雅俊
大阪大学大学院医学系研究科・機能形態学  今泉和則,片山泰一,遠山正彌
大阪大学大学院医学系研究科・社会環境医学  中野有香,竹田潤二
     

 小胞体は,分泌タンパクや膜タンパクの折りたたみの場所として重要であるが,種々のストレス条件下では正常な折りたたみ構造のとれないタンパクが小胞体内に蓄積することが知られている.これを小胞体ストレス(ER stress)とよび,この環境変化に応答するシステムUPR(unfolded protein response)が存在する.すなわち,ERにunfolded proteinがたまると小胞体膜上にあるセンサー分子のIre1pが下流シグナルを活性化する.このシグナルにより最終的にER分子シャペロンGRP78の遺伝子発現が誘導され,unfolded proteinを折りたたむことによってストレスから細胞を防御する.われわれは,小胞体に局在するプレセニリン1(PS1)とこのUPRに注目している.われわれは昨年度,PS1のノックインマウスについて報告したが,今回この胎児より調製した初代培養神経細胞を用いて,変異型PS1のUPRに対する影響について検討した.ER stressに対する脆弱性は変異PS1 homozygous細胞がheterozygousやwild typeの細胞より高かった.このときのGRP78発現を検討すると,変異PS1アレル依存的に低下していることが認められた.さらにウイルスベクターを用いてあらかじめGRP78を発現させてやると,homozygousの脆弱性はレスキューできた.これらの結果から,変異PS1はER stressに対するUPRを減弱させる作用をもち,神経細胞死を引き起こすものと考えられた.

2000/07/06


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