【目的】晩発性パラフレニーは薬物療法の反応性に個体差があり,一部に痴呆の合併もみられる.これらの予後と神経生理学的検査を中心に各種指標との関連を考察した.
【対象と方法】60歳以後に初発の晩発性パラフレニー15名(62〜83歳,平均69.5歳,男性3名,女性12名)を対象に脳波,体性感覚誘発電位(SER),随伴陰性変動(CNV),P300,MRI,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を記録した.SERは手掌部への機械的刺激を用いた.CNVは警告刺激(S1)にクリック音,命令刺激(S2)に閃光刺激を用い,S1-S2間を2秒としてS2後にボタン押しを行う課題とした.P300は2KHZ,1KHZの純音を1:4の頻度で呈示し,前者にボタン押しを行うodd ball課題で記録した.また可能なかぎりSPECTも実施した.全例に薬物療法を行い,治療後の予後から完全寛解8名(A群),不完全寛解5名(B群),不変2名(C群)に分けた.健康老人44名(60〜86歳,平均71.8歳)を対照群とした.
【結果と考察】HDS-Rは全例が21点以上であった.MRIは9名で異常を示し,大脳皮質の萎縮8名,虚血性変化5名であった.初回脳波は正常または境界所見であった.SERのN3潜時は対照群より有意に延長し,CNV振幅は有意に減少,また異常PINVを有意に多く認めた.P300潜時には対照群と有意差はなかった.各群間の比較では,A群に比べB,C群ではMRIで異常所見が多い傾向を認めたが,症例が少ないこともあり有意差はなかった.B,C群のうちSPECT施行例では全例で虚血性変化を認めた.また発症年齢ではA群に比してB,C群では有意に高齢であった.また経過中痴呆を合併した者は3名であった.これらのことから晩発性パラフレニーのなかで難治性の群は比較的高齢で発症し,加齢による脳器質的変化をより強く伴っていると推察した. |