第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-7】
脳波関連
レム睡眠行動障害患者のノンレム睡眠の深さ
   

東京都老人医療センター精神科  塩塚慎一,井川真理子,小山恵子,佐藤淳也
啓仁会平成クリニック  平沢秀人
国立特殊教育総合研究所  渥美義賢
      

【はじめに】高齢者の夜間の異常睡眠のひとつにレム睡眠移行障害(以下RBD)がある.RBDはレム睡眠に一致して起こる抗重力筋のトーヌスの低下が障害され,その結果,夢のなかの行動に一致して実際に体が動き,自分自身やそばで寝ている者が負傷する危険にさらされるというものである.RBDの患者ではレム睡眠以外の部分ではむしろ深い睡眠が多いという報告がある.今回われわれは,RBD患者のノンレム睡眠が通常の高齢者に比べて深いのかどうか検討することを目的として解析を行った.
【方法】対象は,当センターを受診したRBD患者10名で,全例に終夜睡眠ポリグラフィを施行し,視察判定により一夜の睡眠における深睡眠の量を求めた.また脳波データにFFT解析を行い,睡眠徐波の出現量を定量的に測定した.これらの結果を,正常対照郡10名のものと比較検討した.
【結果】RBD患者は,中途覚醒の目立つ者4例と,あまり中途覚醒のない者6例の2群に分かれた.中途覚醒の目立つ群では睡眠は全体に浅く,睡眠徐波の出現量も少なかったが,あまり中途覚醒の目立たない群では有意差はないものの段階3・4の深い睡眠が多く,睡眠徐波の出現量も多かった.
【考察】RBDで中途覚醒が多い群では,覚醒は必ずしもレム睡眠の前後に多いわけではなく,疾病とは無関係に睡眠の浅いものも含まれている.一部にはレム睡眠後の覚醒が目立つものもあり,今後例数を増やして検討する必要があると思われる.

2000/07/06


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