第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【II B-4】
認知機能
老年期精神分裂病者の眼球運動における特徴
  

久留米大学医学部精神神経学教室  龍 博昭,森田喜一郎,宮平綾子
山口 浩,森田恵史,前田久雄
   

 アイマークレコーダーを使用した探索眼球運動は,ヒトにおける視覚情報処理過程を反映する生理学的指標とされている.今回われわれは老年期精神分裂病者の視覚情報処理過程における特徴を探索眼球運動を生物学的指標にして検討した.
 検査の対象は,DSM-Wで分裂病と診断された分裂病者78名と対照として健常者57名である.さらに,分裂病群および健常者群を3群に分けた(40歳以下:成人群,40〜60歳:壮年群,60歳以上:老年群).探索眼球運動は,アイマークレコーダーを使用,平均停留時間,停留点総数,停留点平均移動距離,停留点総移動距離の4要素を解析した.すべての被験者には,書面にて検査前,本研究の説明を行い同意を得た.
 平均停留時間は,健常者群に比べて分裂病者群では有意に長かった.分裂病群において,成壮年群と老年群の間に有意差が観察され,老年群が最も短かった.停留点総数は,健常者群に比べて分裂病者群では有意に少なかった.分裂病群において,老年群と成年群および壮年群の間に有意差が観察され,老年群が最大値であった.平均移動距離は,健常者群に比べて分裂病者群では有意に短かった.年齢との相関では,いずれも有意な関係は観察されなかった.総移動距離は,健常者群に比べて分裂病者群では有意に短かった.年齢との相関では,いずれも有意な相関は観察されなかった.
 分裂病者群では健常者群に比較して探索眼球運動における有意な平均停留時間の延長,停留点総数の減少,平均移動距離・総移動距離の短縮が観察された.また分裂病者群では,平均停留時間および停留点総数は,老年群で健常群との有意差が減少し,50歳ころから,回復することを示唆していると考えられた.

2000/07/06


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