第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UB-1】
診断
石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病(Diffuse neurofibrillary tangles with calcification: DNTC)
−臨床診断ガイドラインの検討−
   

岡山大学医学部精神科神経科  石津秀樹,寺田整司,原口 俊
武久 康,横田 修,黒田重利
岡山大学医学部精神科神経科・国立療養所南岡山病院神経内科  田辺康之
      

【はじめに】DNTCは側頭葉優位の前頭側頭葉萎縮,基底核を中心とした脳内の石灰沈着を特徴とし,アルツハイマー病に類似のタウタンパク異常を示す疾患である.わが国特有ともいえる本疾患の病因解明には,疫学や臨床症状について詳細な検討が重要である.これまで,臨床,病理学的に診断された症例を再検討し,臨床診断ガイドラインを検討したので報告する.
【方法と結果】これまで報告された21剖検例 (自験5例)を検討した(痴呆を認めない初期例2例は含めない).1例を除いてすべて本邦で報告されている.これに,8例(自験4例)の臨床例を含めて疫学的特徴を調べた.報告された地域は関東,中部,近畿,中国で地域的な特徴はない.剖検診断例では,発症は初老期から老年期に多い(平均52.8歳).臨床経過は平均10.5年.家族性発症はない.女性に多い(男/女,5/16,臨床例はすべて女性).近年の臨床報告例の発症は高齢化の傾向がみられ,臨床例を含めた患者の生年では1930年(昭和5年)前後にピークがみられた.
 臨床類型は(1)記憶,見当識障害が早期から目立つ群,(2)人格障害,意欲障害が早期または中期からみられる群,(3)精神症状(幻覚,妄想)を経過中に呈する群がみられた.中期には錐体路,錐体外路症状の出現が多かった.頭頂葉・後頭葉徴候(失行,失認)は初期には認めない.高血圧の合併例,長期経過で脳血管障害やLeukoaraiosisを伴う例がみられた.また,髄液中リン酸化タウタンパクの高値を認めた.
【まとめ】DNTCの多くは記憶障害や人格障害を呈するが,痴呆を認めない症例や精神症状を呈する群もあることから,臨床的には幅広いスペクトラムをもつ可能性がある.特徴ある石灰沈着に加えて,髄液リン酸化タウは高値を示し,Aβ値とあわせて検討すれば臨床診断に利用できる可能性がある.以上のような点を考慮し,臨床診断ガイドラインを作成しいっそうの臨床診断例の増加を期待したい.

2000/07/06


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