第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-9】
ケア
痴呆性高齢者の満足度評価尺度「豊かさチェック」の開発
  

医療法人社団俊仁会大植病院  中山隆人,大植正俊
神戸大学医学部精神神経科  柿木達也,前田 潔
   

はじめに】われわれは昨年のこの学会において,住環境の変化が痴呆性高齢者にどのような影響を与えるかを報告した.その結果はMMSEや,N-ADLの得点においては変化がみられなかったが,われわれが「豊かさ」と名づけた項目においては改善がみられた.「豊かさ」の項目というのは,表出された言動,表情,身振りの変化をとらえ,それをよい方向と悪い方向というように分類することで,対象者の満足度を本人の言語的な伝達によらずに推し量ろうという意図で作成したものであった.また,家族からの情報としても表情がよくなった,活動性や意欲がでてきたといった患者の表出された言語やそれ以外の変化に関する表現が多くみられた.
 これらの結果より,われわれは的確に満足度を言語表現できない痴呆性高齢者においても,知的側面やADLばかりでなく,満足度も推し量っていくために,他者による満足度評価尺度である「豊かさチェック」の開発を試みたので報告する.
【「豊かさチェック」】項目の選定:心理,社会的に,満足や,幸せそうな様子を表すものから「会話」「表情」「身のまわり」「食事」「行事への参加」の5つを選び,上位項目とした.それぞれの下位項目として,量と質に分けた項目を作成し,全10項目とした.各項目の評価は,0点から10点で点数化し,より楽しそうな様子,幸せそうな様子であるほど10点に近いものとした.
【記入方法】幸せそうな様子,楽しそうな様子は,日によって変動があり,受け取り方もさまざまである.よって,記入は,対象者の1週間の様子を病棟全体で観察してもらい,その1週間の平均的と思われる様子を,病棟職員一人一人に個別に記入してもらい,それを集計し,平均した値を真の結果とするという方法をとった.
 学会当日にはその評価尺度の妥当性や信頼性について検討を加え報告する予定である.

2000/07/06


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