第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-8】
ケア
痴呆患者に対するデイケアプログラムの改良効果

旭神経内科病院  角田恵麻,渡邊晶子,本多雅亮,旭 俊臣
千葉大学医学部神経内科  吉山容正
    

【目的】痴呆患者に対するデイケアがさかんに行われているが,デイケアを構成する個別プログラムの内容による効果の差や,個別プログラムの改良による患者の変化に関してはほとんど論じられていない.今回,個別プログラムに変更を加え,それが痴呆患者の心理面の改善に有効かどうかについて,定性的評価とわれわれが開発した「痴呆患者の表情による心理評価スケール」(PAFED)を用い検討した.
【対象・方法】デイケアに通所中の痴呆患者34名(男性12名,女性22名,軽度痴呆群22名,中等度痴呆群12名,平均年齢81.4歳)を対象とした.デイケアで行われている11の個別プログラムに対し,他の患者との交流が行われ,意欲や集中力が持続しやすいようルール,器材,進行様式に変更を加え,変更の前後で評価を行った.
【結果】個別プログラムに変更を行った結果,定性的評価は程度の差は認められたものの,全11のプログラムで改善した.PAFED得点は10のプログラムで上昇し,そのうち「羽根っこゲーム」「新聞パズル」「音楽」「誕生会」の4つでは得点が有意に上昇した.重症度別にみると全プログラムのPAFEDの平均点は軽度痴呆群で変更前17.2点,変更後18.3点,中等度痴呆群で変更前16.2点,変更後16.9点で,軽度痴呆群で有意な上昇を認めた.
【考察】個別プログラム変更後,定性的評価とPAFEDのいずれでも改善を認めたことから,プログラムの変更が痴呆患者の心理面の改善に有効であると考えられた.PAFEDはデイケアの個別プログラムの見直しやその効果の評価に適当であると思われた.また,プログラムの変更は軽度痴呆患者にのみ有効である可能性が考えられた.今後は痴呆の重症度に応じたプログラムの変更方法や,PAFED得点の高いプログラムの組合せが患者の知的機能や介護負担軽減に及ぼす長期的な効果を検討する必要があると考えられた.

2000/07/06


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