第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-7】
ケア
老人デイケア利用者を対象にした,在宅痴呆老人の
介護者の負担感に関する研究
  

福井医科大学精神医学教室・みどりヶ丘病院  杉本貴人
福井医科大学精神医学教室  福谷祐賢,藤渡辰馬,綱沢卓也,佐々木一夫
須藤 哲,福島慎二,和田有司
福井県立大学看護福祉学部  伊崎公徳
たけとう病院  武籐 寛
福井松原病院  松原六郎
大滝病院  大滝秀穂
    

【目的】在宅において,痴呆老人の介護者はその日常生活の介助や見守りに時間をとられ,精神的,身体的,経済的負担を強いられることが多い.今回,老人デイケア利用者を対象とし,在宅痴呆性老人の知的機能や日常生活機能,周辺症状が,介護者の精神的負担感 に及ぼす影響について検討した.
【対象と方法】対象は,デイケア通所中の痴呆患者102名で,アルツハイマー型痴呆41名,血管性痴呆37名,混合型痴呆19名,その他の痴呆5名で,男性35名,女性67名,平均年齢80.4±7.6(mean±S.D.)歳である.主たる介護者の内訳は,配偶者29名,実子41名,嫁32名である.痴呆の診断にはDSM-IVの診断基準を用い,全例に頭部CTを施行した.患者の全般的重症度の評価にはCDRを,認知機能の評価にはMMSEとHDS-Rを,ADLの評価にはFASTを用いた.精神症状の評価には,最近1か月以内に出現した,幻視・幻聴・妄想・不眠・易刺激性・不安・うつの7項目の合計を精神症状スコア(Psy-S)と定義して用いた.問題行動の評価には,徘徊・暴言・暴力・不潔行為・異食の5項目の合計を問題行動スコア(Pro-S)と定義して用いた.介護者の精神的負担感の評価には,ZaritのBurden Interview(ZBI,1980)の29項目を邦訳して用いた.ZBIと,CDR,MMSE,HDS-R,FAST,Psy-S,Pro-Sとの相関を検討した.
【結果】MMSEの平均は13.8±7.2点,HDS-Rは10.3±6.3点,Psy-Sは1.8±2.0点,Pro-Sは1.1±1.3点,ZBIスコアは47.5±20.3点であった.ZBIとCDR,MMSE,HDS-Rとの間に相関は認められなかったが,FAST,Psy-S,Pro-Sとの間には,有意な正の相関が認められた.
【考察】今回の結果より,痴呆の中核症状としての認知機能障害の重症度,病型は介護者の精神的負担感に影響を及ぼしていないようであるが,周辺症状である精神症状や問題行動は,負担感に少なからず影響を与えていることが示唆された.

2000/07/06


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