第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-5】
社会的対応
痴呆性高齢者の権利擁護
    

神戸大学医学部精神神経科  柿木達也,前田 潔
神戸市保健福祉局  舩阪和彦
医療法人仁恵会老人福祉施設サンビラ三木  加藤武男
    

 今年,民法の改正が行われ,あらたな成年後見制度がスタートする.その立法主旨は「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」などの新しい理念と従来の「本人の保護」の理念との調和(法務省民事局)を目指したものである.一方,厚生省は意思能力が十分でない痴呆性高齢者,知的障害者,精神障害者などの権利を尊重し擁護するために地域福祉権利擁護事業を始めている.
 神戸市においても一昨年からこうべ市民福祉振興協会に事務局をおいたこうべ安心サポートセンターを設置した.われわれは運営委員会委員あるいは専門部会委員としてさまざまな専門相談を取り扱った.その相談内容について報告し,考察を加えた.昨年4月から9月までの6か月間に寄せられた相談は361件(電話302件,面談59件)で,うち痴呆性高齢者に関するものが70件(19.4%)であった.内訳は本人から,福祉・行政からおよび子からがそれぞれ1/3ずつであった.内容では財産管理に関するもの18件,財産侵害17件,虐待6件,金融・消費・契約6件であった.事例を呈示して痴呆性高齢者の権利の尊重・擁護の必要性およびその際の問題点について考えたい.

2000/07/06


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