第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-2】
社会的対応
老年期うつ病の入院長期化に関する検討
  

昭和大学医学部精神医学教室  高橋彩子,三村 將,田所千代子,西岡玄太郎
高橋太郎,秋元洋一,上島国利
   

【背景】われわれは過去に老年期うつ病の遷延化要因を検討し,サ身体愁訴や心気症傾向の強いもの,シ症状出現から精神科受診までの期間の長いもの,ス有効治療量まで抗うつ剤を使用できなかった者では入院が長期化する傾向があることを指摘した.
【目的】今回はさらに老年期うつ病患者の評価尺度を入院後3か月追跡し,入院長期化の要因を検討した.
【方法】対象は昭和大学病院精神科に1994〜1998年に入院した65歳以上の大うつ病患者(DSM-IV)48例.入院日数が90日以上の長期群24例と90日未満の短期群24例に区分した.Hamilton Depression Scale(HAM-D)の総得点,および4つの下位評価(抑うつ・意欲低下・心気症・妄想)を入院時(0w)・4週後(4w)・12週後(12w)の3時点で評価し,反復測定の分散分析を施行した.さらに,薬物療法と副作用の状況,画像所見,身体合併症についても評価した.
【結果と考察】HAM-D総得点は長期群では0w-25.5,4w-20.6,12w-14.1,短期群では0w-26.2,4w-11.1,12w-7.3であった.入院時には両群で差がなく,また両群とも改善傾向を示したが,長期群は改善傾向が乏しかった.下位尺度の継時的変化に関しては,抑うつでは両群ともに同様の改善傾向を示したが,一方,意欲低下と心気症では長期群の継時的改善が乏しく,「群」と「時期」では有意な交互作用を認めた(p<.05).妄想は入院時には長期群で高得点であったが,その後改善傾向を示した.また,抗うつ薬の使用に関しては,短期群では20/24例が1剤のみで,単剤主体であるのに対し,長期群では1剤のみは9/24例で,多剤併用となることが多かった.このことは治療効果が十分でなかったこととともに,副作用の発現が長期群で17/24例,短期群で9/24例と差を認めたこととも関連すると思われた.身体合併症の有無,頭部CT・MRIでの脳萎縮や虚血の有無は両群で明らかな差は認めなかった.
【まとめ】老年期うつ病の入院長期化例では意欲低下・心気症の遷延と,多剤併用・副作用出現が多いことが示された.

2000/07/06


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