第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【UA-1】
社会的対応
精神障害を伴う高齢者の入院について
   

東京武蔵野病院・聖母女子短期大学  金川英雄
東京武蔵野病院  辰野 剛,大塚俊男
多摩川病院  橋本俊明
埼玉県精神保健総合センター  坂井俊之
埼玉中央病院  巽 正彦
東京都立府中病院  野崎伸次
加藤医院  加藤雅治
    

【はじめに】高齢社会の到来が叫ばれて久しいが,精神障害者の高齢化と,痴呆ばかりでなく不定で多彩な高齢初発患者も増加している.そのような患者群を,精神病院はどのようなシステムをもった病棟で,治療すればいいのであろうか.それを探る意味で今回発表する.
【方法】当院は精神科637床,内科外科49床を有する,12の病棟によって構成される精神病院である.長期入院傾向にあり,機能不全に対処するために全国唯一の包括開放『急性期精神科病棟』を96年10月に演者は運営した.それをかりにハードな急性期開放病棟とよぶなら,ソフトな急性期開放病棟の必要性を痛感した.そのため98年8月より,別の慢性病棟の機能分化をし,65床のソフト急性期開放精神科病棟を立ち上げた.運営するうちに当病棟が最初に述べた高齢群の受け皿になるのではと考え,12年間にわたる入院患者の調査分析を行った.
【結果】(1)開放処遇はかわらなかったが,病院内の役割分担の位置づけによって,年により入院患者のばらつきがあった.(2)平成元年から平成12年まで1,514人の入院があり,65歳以上の入院が291人であった.年平均は全体で137.6人,高齢群は26.5人でその%は19.2%であった.(3)高齢者は他院転院が全体より高かった.たとえば99年は全体では転院は6.2%であったが,高齢群は16.7%であった.(4)処遇などの問題を抱え,他病棟からの転入が多かった.とくに内科外科病棟との転入出が多かった.
【考察】(1)高齢群は精神のほかにも,身体的に多数の問題を抱えているものが多い.身体精神的にある程度の治療をして,振り分け機能をもつ病棟が必要と考えた.(2)そのような患者専門というよりは,多機能の柔軟に対応できる病棟のほうが幅広く対応できると思われた.(3)生活習慣病も増加しており,それらへの積極的な対応が必要になってきている.外来でも精神障害者の訪問栄養指導を行っているが,入院でも生活習慣病の教育プログラムの必要性を痛感しており現在計画中である.当日さらに詳細な発表をしたい.

2000/07/06


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