第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-14】
治療

不眠高齢者に対する短時間昼寝・軽運動の睡眠改善効果

国立精神・神経センター精神保健研究所老人精神保健部  田中秀樹,山本由華吏
白川修一郎
琉球大学教育学部生涯健康基礎学講座  平良一彦

 本研究では,睡眠健康の悪化している高齢者を対象に,昼食後の短時間昼寝および夕方の軽運動指導を介入的に行い,睡眠健康の改善効果について検討した.
【方法】沖縄在住の788名の高齢者を対象に睡眠健康に関する標準化された質問票を用いて調査を行った.睡眠健康危険度得点に基づく睡眠健康非良好群・良好群(上位・下位150名)から各9名(65歳から87歳)ずつ抽出し,活動量を1週間連続測定した(指導前ベース期).研究の内容を十分に説明し同意を書面で得たのち,スクリーニングテストを行い,通常の家庭生活を送っている者を対象者とした.睡眠健康の悪化している高齢者に対して1か月間の昼食後の短時間の昼寝および夕方の軽運動生活指導を介入的に行った.指導介入にさきだち体力測定,血圧測定,精神健康度(GHQ)を行った.介入前後の活動量測定期間中は睡眠日誌,睡眠感(OSA),就床前,起床後,運動前後に心理状態調査(VAS),日中の主観的眠気(SSS)についても測定した.
【結果と考察】ベース期活動量測定の結果,睡眠健康非良好群が良好群に比べ,中途覚醒時間,入眠潜時ともに有意に長いこと,睡眠時間は有意に短く,睡眠効率も有意に低いことが確認できた.そこで,次に睡眠健康非良好群を対象に,昼食後の短時間の昼寝と夕方の軽運動による生活指導を1か月間行い,介入効果を1週間の活動量測定により評価した.その結果,生活指導介入後で中途覚醒の有意な減少,睡眠効率の有意な増加が認められて夜間睡眠が質的に改善していることが判明した.一方,夕方から就床前の居眠り混入の減少や日中の活動量の増加が認められた.日中の主観的眠気についても,介入指導後で全般的に減少する傾向が認められ,とくに,夕方に顕著であることが判明した.夜間睡眠の悪化は,日中の適正な覚醒維持,とくに夕方の眠気,居眠りと関連していることが示唆された.本研究より,日中の適正な覚醒確保が高齢者の睡眠健康にとって重要であることが検証でき,今回の介入技術の現場応用での有効性が示された.

2000/07/05


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