第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-13】
治療

高照度光療法とVitB経口投与併用療法が
アルツハイマー型痴呆者の生体リズムに与える影響

日本医科大学精神医学教室  伊藤敬雄,山寺博史,鈴木英朗
伊藤理津子,朝山健太郎,遠藤俊吉

【目的】高照度光療法とmethylcobalamin(VB12)経口投与療法の併用療法が,アルツハイマー型痴呆(ATD)の生体リズムに与える影響について研究した.
【対象と方法】ATD群未治療例35例の全被験者に対して4週間にわたる高照度光療法を施行し24例の被験者を選択した.年齢と痴呆重症度をマッチさせた2群に分けて,一方にVB12を投与(VB12群),他方は薬物なし(F群)として,さらに4週間,計8週間の高照度光療法を継続施行した.VB12は8と12Amに経口投与され第5週目から2週間は1,500μg/day,第7週目からは2週間3,000μg/dayに増量した.高照度光療法施行前,高照度光療法施行4,6,8週間後において睡眠・覚醒リズムの指標としてアクチィグラフを用いて測定した.また,概日リズムの指標としてメラトニン分泌リズムを高照度光療法施行前,高照度光療法施行4,8週間後に測定した.なお,被験者本人と保護者に研究の意図を十分に説明し書面で同意を得た.
【結果】痴呆初期群ほど4週間の高照度光療法によって,睡眠・覚醒リズムでは夜間の睡眠の質と日中の覚醒度の改善を認め,メラトニン分泌リズムでは夜間の分泌量と振幅の増加,位相の前進を認めた.8週間の高照度光療法によって,F群では第4週と比較して生体リズムにおいて有意な変化は認められなかった.しかし,VB12群では血中濃度増加によって覚醒時の活動レベルが増加した.
【考察】痴呆初期群においては,高照度光療法によるメラトニン分泌リズムを指標とした概日リズムと睡眠・覚醒リズムの改善効果,またVB12による睡眠・覚醒リズムの日中の覚醒度の上昇効果があると考えられた.

2000/07/05


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