第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-12】
治療

レム睡眠行動障害に対するメラトニンの効果
  

久留米大学医学部精神神経科  竹内 暢,向井正樹,内村直尚,橋爪祐二,前田久雄
小鳥居諫早病院  小鳥居堪
大島病院  大島博治,大島正親
     

 レム睡眠行動障害(RBD)は,睡眠中に夢内容に一致して大声をあげたり,隣で寝ている配偶者をなぐる等の異常行動を呈する睡眠随伴症のひとつで,1990年に睡眠障害国際分類に正式に採用された.しかし半数以上を占める特発性RBDは好発年齢が50歳以降と比較的高齢であることや,疾患として医療者にもあまり知られていないため,せん妄等と誤診されているケースも少なくない.
 一方治療薬として,クロナゼパムが一般的に用いられるが,高齢者の場合,中途覚醒時に筋弛緩作用による転倒や骨折を生じたり,翌日への持ち越し効果などが危惧される.そこで今回われわれは,患者の承諾を得たうえで,メラトニン3mgを就寝30〜60分前に投与し,その有効性を検討した.
 対象は久留米大学病院精神神経科睡眠障害クリニックに,睡眠中の異常行動を主訴として受診した65歳以上の15症例であった.臨床症状からは15例全例がRBDと考えられ,13例に終夜ポリグラフ(PSG)を施行した.13例中男性は12例,女性はわずか1例であり,年齢は65〜84歳(平均67.6歳)であった.また他疾患との鑑別のため,頭部MRI,SPECT,睡眠時脳波やアクチグラム検査,さらに3時間ごとのメラトニン血中濃度測定をあわせて行った.自宅における効果判定の指標としてはおもに配偶者の臨床症状の評価を参考とし,症状の改善が認められない者にはメラトニンを9mgまで増量した.さらに症状固定後にPSG検査,アクチグラム,メラトニン血中濃度測定を施行し客観的な治療効果判定を行った.
 PSG所見としては,本疾患に特徴的なレム睡眠期に持続性(tonic REM)および相動性(phasic REM)の頤下筋の筋放電の亢進を認めた.また徐波睡眠が比較的多く出現していた.学会当日はメラトニン投与前後の諸検査の詳細な検討を行い,さらに若干の考察を加えて報告する.

2000/07/05


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