第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-11】
治療

パールランド式行動障害評価表およびBEHAVE-ADによる塩酸チアプリドの有用性の検討
  

パールランド病院  濱園茂樹,有銘 工,森越ゆか,日高和吉,猪鹿倉武
東京都老人総合研究所精神医学部門  本間 昭
   

【目的】当病院では痴呆患者の行動障害についてパールランド式行動障害評価表(パールランド式)を作成し,看護や治療の指針としている.近年Reisbergらが提唱し,朝田らにより翻訳されたBEHAVE-ADが痴呆患者の行動障害を評価・測定する尺度として注目されている.今回,脳血管性痴呆患者の行動障害に対して,塩酸チアプリド(グラマリール・)の有用性を検討したが,効果判定の一助としてパールランド式とBEHAVE-ADを使用した.その結果から両評価尺度の相関・反応性を調べ,パールランド式の妥当性を検討した.
【対象と方法】平成10年10月〜平成11年12月に入院中の脳梗塞後遺症に伴い精神症候(攻撃的行為,精神興奮,徘徊,せん妄)を有する患者25名を対象とした.開始時に痴呆の程度を評価,開始時,1,2,4週後にパールランド式・BEHAVE-AD・精神症候重症度・知的精神機能全般の障害・ADL全般の障害を担当医が評価した.
【結果】痴呆の程度は,軽度6名,中等度11名,重度8名であった.他剤の使用等により2例を除いた23例を評価対象とした.知的精神機能およびADL全般には,ほとんど影響が認められなかった.行動障害は,両評価尺度ともにBEHAVE-ADにおける7カテゴリーのうちの妄想概念・行動障害・攻撃性・日内リズム・感情障害に改善がみられた.BEHAVE-ADでは不安恐怖においても改善がみられた.効果の発現時期は投与開始1週後から認められ,2週以内の効果発現が多かった.
【考察】塩酸チアプリドは,脳血管性痴呆患者の行動障害にも有用であり,効果発現も早いことが確認された.パールランド式は行動障害に重点をおいて設計されているのに対してBEHAVE-ADはATDを対象とした精神症状,行動障害を測定する尺度である.パールランド式には幻覚・不安恐怖に該当する項目がないことや症候の頻度をグレードとすることなどまったく一致するとは言い切れないが,5カテゴリーにおける評価は相関した推移を認めた.パールランド式はBEHAVE-ADと同等の相関性,反応性を示すことが示唆された.

2000/07/05


 演題一覧へ戻る