第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-8】
疫学

ダウン症候群の長期予後
  

国立コロニーのぞみの園  葭葉 高,花岡 卓二
吉田正守,斉藤史泰
群馬大学医学部神経精神医学教室  米村公江,服部 卓
群馬大学保健管理センター  宮永和夫
   

 特殊法人心身障害者福祉協会国立コロニーのぞみの園(群馬県高崎市寺尾町)は昭和46年に開所した重度心身障害者施設である.現在543名の入所者がおり,そのうち45名がダウン症候群で,全入所者に占める割合は約8.3%である.開所以降のダウン症候群数は,60名(男性40名,女性20名)で,途中7名が死亡,8名が退所している.内訳は,47/21trisomy33名,47/21trisomy-mozike22名,translocation1名,不明4名で,平均年齢48.97歳である.年齢の構成は,65〜69歳1名,60〜64歳4名,55〜59歳5名,50〜54歳6名,45〜49歳22名,40〜44歳3名,35〜39歳4名であった(平成11年4月1日現在,ただし死亡・途中退所者を除く).
 これらダウン症候群の予後について,同所に入所中の出生後脳感染症(男69名,女50名,平均年齢52.31歳)および周産期低酸素脳症(男38名,女25名,平均年齢48.40歳),と比較検討した.
【結果】1.ダウン症候群45例中痴呆化した例は1例であった.
 2.ダウン症候群の死亡原因は,急性心不全3名,睾丸腫瘍2名,膵がん1名,細菌性心内膜炎1名であった.
 3.IQ(鈴木ビネー)について,入所時と現時点での比較をすると,不変群21名,低下群13名,比較不能11名(いずれの測定時も知能14点未満)であった.他の2疾患(出生後脳感染症,周産期低酸素脳症)との間で統計学的検定(χ2乗検定)を行ったが,互いに有意差を認めなかった.
【まとめ】ダウン症候群は,35〜49歳で8%,50歳以降では55%以上が痴呆を合併するとのLai Fらの報告があるが,今回の結果では,痴呆の率が低くかつ死亡者数が少なかった.

2000/07/05


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