第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-7】
疫学

鳥取県米子市における進行性核上性麻痺の疫学的検討

鳥取大学医学部脳神経内科  鞁嶋美佳,楠見公義,足立芳樹,中島健二
   

【目的】中年以後に痴呆・パーキンソニズムを呈するprogressive supranuclear palsy(PSP,進行性核上性麻痺)の有病率に関する疫学的検討は欧米においては少数ながら報告はあるものの,本邦ではほとんどない.今回,われわれは鳥取県米子市におけるPSPの有病率調査を行ったので,報告する.
【対象および方法】鳥取県米子市および境港市・西伯郡の老人保健施設・特別養護老人ホーム・長期療養型病院計12施設に入所・入院中の鳥取県米子市に住民票をもつ患者956人(男性221人,女性735人)を対象に神経内科医が直接訪問,診察した.診断はNINDSの診断基準に従い診断の確定を行い,鳥取県米子市における1999年4月1日現在の人口により有病率を算出した.
【結果および考察】男性2人(possible),女性1人(probable)の計3人がPSPと診断された(平均年齢78.8歳).鳥取県米子市におけるPSPの有病率は,男性が10万人あたり3.05人,女性が10万人あたり1.39人,男女あわせて10万人あたり2.18人であった.この値は欧米の他報告と大きな差は認められなかった.これら3名はこれまでおのおの多発性脳梗塞,脳血管性痴呆,うつ病と診断されて加療を受けており,今回初めてPSPと診断された.PSPの鑑別疾患として,パーキンソン病をはじめとするパーキンソニズムをきたす疾患があげられるが,今回の調査では,それらの病名もついておらず,診断に関する注意を喚起する必要があると考えられた.

2000/07/05


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