第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-6】
疫学

和歌山県における老年期痴呆の実態調査  −第3報−
 

和歌山県立医科大学神経精神医学教室  下垣内潤,北端裕司,志波 充,吉益文夫
和歌山県精神保健福祉センター  朝井 忠
  

【目的】われわれは平成7年より,和歌山県下の3か所において,その環境要因を検討する目的で,痴呆性疾患の実態調査を行った.山間部に位置する花園村についてはすでに本学会で報告したが,花園村,海岸沿いの漁業に従事する8地区を選んだ日高町,および,海岸に近い平野部に位置する勝浦町の3地区について比較検討した.
【対象と方法】第一次スクリーニングでは,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)により,65歳以上のすべての対象者に対して悉皆調査を行い,20点以下のスクリーニング陽性者に対して,DSM-Wおよび柄澤式「老人知能の臨床的判定基準」,Hachinskiの脳虚血スコア,NINCDS criteriaを参考として痴呆の診断および下位分類を行った.
【結果】花園村では痴呆の有病率は,痴呆疾患全体では8.5%であり,アルツハイマー型痴呆3.5%,血管性痴呆3.0%,その他の型の痴呆2.0%であった.日高町では,それぞれ,5.7%,3.9%,1.2%,0.5%であり,勝浦町では,3.6%,1.6%,1.3%,0.7%であった.3地区を比較すると,花園村ではアルツハイマー型痴呆,血管性痴呆ともに高い値を示し,日高町では血管性痴呆の値は低く,勝浦町ではともに低い値を示した.
【考察】血管性痴呆では,食生活を含めたリスクファクターの管理によるところが大きく,アルツハイマー型痴呆では地域的要因が痴呆の環境因子として作用していることが推察された.

2000/07/05


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