第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-5】
疫学

新潟県糸魚川市における痴呆の有病率
  

東京慈恵会医科大学精神医学講座  中村紫織,岩元 誠,角 徳文
繁田雅弘,牛島定信
高田西城病院  川室 優
東京都老人総合研究所精神医学部門  新名理恵,本間 昭
    

 平成9年度から10年度にかけて新潟県糸魚川市において施行した「高齢者こころとからだの健康調査」の一環として,痴呆性疾患の有病率を調査した.糸魚川市は,人口33,120人・高齢化率23.4%(平成9年度)で,山間地域および漁村地域を広く含んでいる.対象は平成9年4月1日を基準日とした満65歳以上の高齢者7,847人であった(男性3,222人,女性4,625人).高齢者本人および家族・介護者を対象として,既往歴・現病歴・ADL・精神症状および行動障害・Mini-Mental State Examination(MMSE)等を含む基礎調査を行った.基礎調査が有効であった者が6,394人で,調査不能者が1,453人であった.基礎調査に基づいて,MMSE,現疾患,精神症状,ADLに関する一定の条件を満たす者に対して“痴呆の疑い”として専門調査を行った.“痴呆の疑い”に含まれなかった5,480人の高齢者については,そのなかから200人を無作為に抽出し,専門調査の対象とした.その結果,在宅高齢者の痴呆の有病率は10.6%と推定された.従来なされた調査結果よりも高値であった.性別では,男性10.8%,女性10.4%であった.年齢段階別では,65〜69歳4.4%,70〜74歳7.3%,75〜79歳6.3%,80〜84歳20.7%,85歳以上34.4%であった.加齢とともに有病率も増大していた.原因疾患の内訳では,アルツハイマー型痴呆57.1%,血管性痴呆22.6%,その他の痴呆3.8%,不明の痴呆16.5%であった.わが国では,血管性痴呆の比率が減少し,アルツハイマー型痴呆の割合が増大する傾向にあるが,今回の調査ではその傾向が顕著に認められた.痴呆性疾患の有病率および原因疾患別内訳について考察を加えて報告する.

2000/07/05


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