第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-3】
疫学

痴呆外来,老人性痴呆疾患治療病棟,重度痴呆
デイケアにおける患者の動向

愛媛大学医学部神経精神医学教室  安岡卓男,池田 学,繁信和恵,福原竜治
財団新居浜病院  酉川志保,酒井ミサオ,塩田一雄,松井 博

 愛媛県新居浜市の中心部にある財団新居浜病院は,痴呆性疾患に関して,痴呆外来,老人性痴呆疾患治療病棟,重度痴呆デイケアを有する単科の精神病院である.平成10年1月から11年12月までの2年間の初診患者は151人(男58人,女93人)であった.これらの症例について,1.診断分類,2.患者数,3.男女比,4.平均年齢,5.居住地域,6.受診経路,7.独居の有無,8.身体合併症,9.初診時の認知機能評価,10.精神症状評価,11.痴呆重症度評価,12.ADL評価,13.初診前の社会資源の利用,14.入院日数,15.退院後の処遇等について調査したので報告する.
 初診患者の内訳はアルツハイマー病48%,脳血管性痴呆22%,混合型痴呆3%,前頭側頭葉変性症7%,レビー小体病5%,老年期精神病4%,せん妄11% (他疾患との重複あり),その他3%であった.平均年齢は78.4歳で全体の67%が新居浜市内からの入院であった.受診経路は,医療機関28%,施設20%,行政9%,その他43%であった.38%が初診前に何らかの社会資源を利用していた.全体の11%が初診時に独居であった.初診時の認知機能検査の平均は,MMSE:15/30,RPCM:21/36,SMQ:11/46であった.痴呆重症度評価(CDR)の平均は2.1であった.精神症状評価はNPI:28であった.ADL評価はIADL:3.4/8,PSMS:2.4/6,介護負担度はZARIT:23/88であった.症例の75%が高血圧等何らかの身体合併症を有していた.
 これらの症例のうち,58%が入院した.入院患者の疾患の内訳は,アルツハイマー病48%,脳血管性痴呆24%,混合型痴呆4%,前頭側頭葉変性症11%,レビー小体病6%,老年期精神病4%,せん妄9%(重複あり),その他1%であった.各検査の結果は,入院患者ではNPI:34,IADL3,PSMS:2,ZARIT:24であり,非入院患者ではNPI:20,IADL:4,PSMS:3,ZARIT:22であった.入院日数は平均148日であり,退院先は家庭が42%,施設24%,転院32%,死亡退院2%であった.退院した症例のうち21%が当院のデイケアを利用した.
 当院では,初診時でMRI等の各種検査が実施され,精神症状が激しく入院が必要と思われる症例には一週間以内に入院治療を開始し,入院中には作業療法士等による働きかけやソーシャルワーカーによる退院後の介護環境の調整等が行われ,90日以内での退院を目指している.しかしながら,入院期間が90日を超える症例が58%存在した.発表当日はデータを追加し,認知機能,精神症状,問題行動等の改善度についても考察し入院の長期化の要因を検討する.

2000/07/05


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