第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TB-2】
疫学

愛媛県下の大学病院外来・単科精神病院・
一町村における痴呆性疾患患者の動向

愛媛大学医学部神経精神医学教室  福原竜治,池田 学,安岡卓男,牧 徳彦
鉾石和彦,根布昭彦,繁信和恵
小森憲治郎,田邊敬貴
財団新居浜病院  酉川志保,酒井ミサオ,塩田一雄,松井 博

【目的】愛媛大学医学部附属病院精神科神経科では,1996年1月より,高次脳機能外来を開き,おもに痴呆性疾患の診療を行っている.今回,当院高次脳機能外来患者の動向を調査し,中山町疫学調査および愛媛県新居浜市中心部の単科精神病院(いずれも車で40分の距離にある)における同様の調査結果と比較し,若干の考察を加え報告する.
【対象と方法】対象は,当院高次脳機能外来患者の連続例271名(男性125名,女性146名,平均年齢68.5±14.9歳)と,第一回中山町調査において痴呆性疾患と診断された65歳以上の60名(男性21名,女性39名,平均年齢81.5±6.7歳),および財団新居浜病院における痴呆性疾患外来・入院患者151名(男性58人,女性93人,平均年齢78.4±8.5歳)である.上記対象において,診断分類・重症度・初診時精神症状・初診時認知機能・ADLについて評価した.診断はDSM-W・NINCDS-ADRDA等の診断基準により行い,頭部CTまたはMRIをほぼ全例施行し診断の補助とした.重症度は,Clinical Dementia Rating(CDR)および柄澤式「老人知能の臨床的判定基準」により評価された.また精神症状はNeuropsychiatric Inventory(NPI),認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)およびShort-Memory Questionnaire(SMQ),ADLは,Physical Self-Maintenance Scale(PSMS)ならびにInstrumental Activities of Daily Living Scale(IADL)により評価された.
【結果】当院高次脳機能外来における65歳以上痴呆性疾患の診断内訳(現時点)はアルツハイマー病(AD)67%,脳血管性痴呆(VD)10%,前頭側頭葉変性症(FTLD)11%,レビー小体病7%,その他6%であった.中山町調査と比較しVDの割合が低くADとFTLDが高く,単科精神病院と比較してもほぼ同様であった.精神病院においては患者のNPIが高く,ADLが低いという結果が得られた.しかしMMSEの平均点においては,3群間で有意な差を認めなかった.
 愛媛県下の,一町村・単科精神病院・大学病院外来における痴呆性疾患患者は,各施設の機能の特徴を反映し,疾患の割合・精神症状の程度・ADLのレベルにおいて3群間で異なる特徴を有することが明らかにされた.
 当日は,年齢,性別,重症度,疾患群も考慮にいれたデータも示し,より詳細な分析結果を報告する.

2000/07/05


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