【はじめに】人口の高齢化に伴い在宅で介護される痴呆老人の増加が予想されるが,痴呆老人の介護は介護者の身体的健康のみならず,精神的健康に多大な影響を与えることが知られている.介護者の現状を明らかにするために平成11年度に熊本市が調査を行った.また,自立高齢者においても,こころの問題が心身の健康を維持し生活を維持していくために重要であるとの考えから,高齢者の精神的健康度と睡眠の状況も熊本市があわせて調査した.そのなか中の一部を分析し報告する.
【対象と方法】(1)平成11年度の当市の高齢者実態調査(悉皆調査)で痴呆を有するとされた1,181人から無作為抽出された200人中条件を満たした119人に連絡し,同意を得られた85組の痴呆性老人とその介護者に対して,柄澤式,GHQ,whoQOL,介護状況に関するアンケートを訪問調査によって行った.(2)同じく高齢者実態調査で自立とされた高齢者81,153人から無作為抽出された300人にGHQ,Pittberg睡眠質問表等を郵送した.
【結果】(1)痴呆性老人の介護者85人のQOL平均値は3.03±0.52であった.QOLに影響を及ぼす要因として以下のようなことが有意差検定によって明らかになった.痴呆性老人の痴呆度や介護者の属性についてはQOLに有意差はなく,「一人で介護している」「精神的な孤立」「排泄の失敗」「夜間せん妄」等がQOLに影響を及ぼすと考えられた.(2)自立老人の208人から回答を得られた.GHQについては健康成人と同様の分布であった.睡眠調査については,睡眠時無呼吸症候群5.3%,睡眠時ミオクローヌス症候群8.6%,夜中に寝ぼける2.4%,レストレス・レッグス症候群12.9%で,1週間に3回以上睡眠薬を服用している人が12%であった.
当日はさらに詳しい統計的検討を交えながら,他都市との比較も含めて考察を加えたい. |