第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-22】
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PETを用いた脳内アセチルコリンエステラーゼ活性測定
によるアルツハイマー病の診断

放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション・順天堂大学医学部
メンタルクリニック科
 黄田常嘉
放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション・旭神経内科病院  篠遠 仁
放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション  福士 清,棚田修二,入江俊章
放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション・第一化学薬品  長塚伸一郎
放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション・千葉大学医学部神経内科
  青墳章代
放射線医学総合研究所高度診断機能研究ステーション・東京女子医科大学脳外科 
 田中典子
順天堂大学医学部メンタルクリニック科  新井平伊
   

 コリン作動性神経の変性はアルツハイマー病(AD)などの痴呆疾患における進行性認知障害の主たる原因であるといわれている.われわれは脂溶性のアセチルコリンアナログである[11C]MP4A(メチルピペリジル4-アセテート)をトレーサーとして用い,PETによる脳内アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の測定法を開発し,ADの診断に応用してきた.今回われわれは,早発性AD患者の脳内AChE活性と脳血流の指標とを比較し,その診断に果たす有用性を検討した.
【対象と方法】NINCDS-ADRDAの診断基準を満たす,65歳未満で発症した早発性AD19例,健常対照者14例について検査を実施した.[11C]MP4Aを静脈投与して脳内放射能動態をPETにて測定し,動脈採血による入力関数測定と3-コンパートメントモデルに基づく動態解析により,トレーサーの脳への取り込み速度定数(K1),脳からの洗い出し速度定数(k2),AChEによる代謝速度定数(k3)を求めた.K1値は局所の脳血流を,k3値は局所AChE活性の指標である.Mini-Mental State Examination(MMSE)の得点とK1値,k3値の回帰直線を求め,MMSEのCut-off pointを23/24としたときの大脳皮質のK1値,k3値の健常対照に対するそれぞれの低下率についてZ値を求めた.
【結果】健常対照群に比較して,大脳皮質におけるK1値のCut-off pointでの低下はZ値として−0.75であったのに対し,k3値の低下は−2.84とより高度であった.とくに,大脳皮質のなかでは側頭皮質,後頭皮質においてK1値と比べてk3値の低下が顕著であった.
【結論】脳内AChE活性測定は脳血流測定と比べて,ADの初期診断により有用である可能性が示唆された.

2000/07/05


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