第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-21】
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生物学的診断マーカーと脳血流SPECTの関係
−Aβ42について−
  

国立精神・神経センター武蔵病院精神科・順天堂大学医学部精神科  中野正剛
国立精神・神経センター武蔵病院精神科  朝田 隆,宇野正威
国立精神・神経センター武蔵病院放射線科・順天堂大学医学部精神科  坂本茂貴
国立精神・神経センター武蔵病院放射線科  松田博史
順天堂大学医学部精神科  木村通宏
東京医科大学老年科  高崎 優
  

【はじめに】近年,抗痴呆薬の開発が活発になり臨床で使用され始め,効果を判定するための神経心理学的な検討とは別の客観的な指標が求められるようになった.その意味で,アミロイド,タウやそれらの関連物質とともにPET,SPECTも注目すべき検査である.AD診断のマーカーとされる物質のうち,脳脊髄液中のアミロイドβ-42については多くの報告で重症度とともに減少するとされる.今回,われわれはアミロイドβ-42を測定し,同時に脳血流SPECTを施行し,両者の関係について検討した.
【対象と方法】31名のDAT患者(男性9名,女性22名,平均年齢67.6歳)を対象とした.検査施行時のMMSEは,3〜30点(平均16.8点)である.十分な説明と文書による同意のもとに腰椎穿刺を行い,脳脊髄液を採取した.腰椎穿刺の翌日から7日以内に99mTc-ECD SPECTを施行した.画像統計処理は,SPM99を用いた.
【結果】MMSEとCSF-Aβ42値の関係は,R=0.318(p=0.05)と弱い正の相関を認めた.SPM99による画像統計解析では,統計学的にCSF-Aβ42値と相関して局所的に血流の低下している部位は,左側頭頂葉皮質および楔前部であった.
【考察】従来AD脳では基本的に側頭・頭頂葉の障害があり,前頭部などの連合野へ障害か進むが,一次運動・感覚野は比較的保たれることが示されてきた.今回,まずMMSEとβ-42の相関を確認した.さらに,左側頭頂葉,楔前部の血流低下がMMSEと相関していた.また,左側頭頂葉,楔前部の脳血流量はβ-42の量と相関しており,これらの部位の局所脳血流量が重症度を反映すると考えられた. 

2000/07/05


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