第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-18】
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加齢に伴う記憶障害患者の臨床および脳血流の経時的変化
−続報−

  

日本医科大学付属病院神経内科  石渡明子,片山泰朗
日本医科大学付属千葉北総病院  酒寄 修
日本医科大学付属第二病院  北村 伸
  

【目的】アルツハイマー病(AD)の早期診断の重要性に対する認識は,今後ますます深まることが予想される.しかしこの早期診断の際,CTやMRIによる形態学的所見では萎縮しか認められず,加齢による変化と鑑別するのが困難である.そこでわれわれは加齢に伴う記憶障害患者(age-associated memory impairment;AAMI)のsingle photon emission CT(SPECT)を用いた局所脳血流量(regional cerebral blood flow;rCBF)に注目し,その評価を行ってきた.その結果,AAMI患者の側頭葉内側面における脳血流は,正常老年者と比較して有意に低下することを報告してきた.今回約6年間にわたる神経心理学的検査と脳血流の継時的変化の検討において,さらに興味深い結果が得られたので報告する.
【方法】AAMI患者12例(追跡開始時平均70.5±6.1歳)を対象とし,6か月〜12か月間隔で,ARG法SPECTを用いて局所脳血流量を測定,ほぼ同時期に神経心理学的検討を実施し,両者の経時的変化について検討した.
【結果】約6年にわたる経過観察中に,AAMI患者12例中の4例に社会生活に不適合なエピソードが認められるようになった.さらにその後の経過で,4例中2例がADと診断されるに至った.これら結果的にADと診断された症例では,追跡開始当初より側頭葉内側面の脳血流が他の領域と比較して低値を示す傾向にあった.一方,AAMIのままで経過している残りの8例においては,側頭葉内側面の脳血流は追跡開始当初より現在まで比較的保たれていた.
【考察】AAMI患者のなかには将来ADに進展する症例が含まれていることが明らかになった.さらにAAMIからADへの進展を予測するうえで,局所脳血流量の変化に注目する必要があることが示唆された.

2000/07/05


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