第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-17】
画像

高齢者のうつ病におけるI-123IMP脳血流
SPECT所見について
  

藤田保健衛生大学精神医学教室  鈴木 陽,池田淑夫,尾崎紀夫
藤田保健衛生大学放射線医学教室  外山 宏,菊川 薫,古賀佑彦
    

【目的】近年,うつ病においてSPECTを用いた脳血流変化についての検討がなされている.前頭葉,帯状回などでの血流低下の指摘があるが,高齢者における検討がなお不十分である.そこで,高齢者うつ病のさまざまな病相期についてSPECTを用いて脳血流を検討した.
【対象と方法】DSM-IVに合致した高齢者のうつ病33名(男性21名,女性12名,平均年齢67.2±8.0歳)に対し,うつ病の評価尺度(HRSD),SPECTを施行した.健常対照群8名(男性6名,女性2名,平均年齢64.8±6.1歳)と比較した.対象者全員に今回の研究の趣旨を説明し,同意を得た.なお,対照群,症例群ともに全例右利きであった.SPECTは島津製作所ヘッド・トームSET-031(空間分解能12.3mmで,アイソトープ静注10分後,17分間データ収集),東芝GCA-7200A/DI,(空間分解能9.2mmで,アイソトープ静注10分後,40分間データ収集)のいずれかによって行った.核種は全例,Nイソプロピル-P-123 Iヨードアンフェタミン(I-123-IMP)を用いた.得られたSPECT画像に対し,OM+20,55,90mmを中心に,左右前頭葉内側・外側,側頭葉前部・後部,後頭葉,前頭葉上部,頭頂葉,一次運動感覚野,小脳半球に関心領域を設定し,左右おのおの関心領域のcounter ratioの値と左右小脳半球の値との比(以下小脳比)を求め,半定量的評価を行った.各群の小脳比をそれぞれMann-WhitneyのU-test(有意水準は危険率5%以下)を用いて比較した.
【結果と考察】大うつ病群のHRSDの平均値は15.5±8.7であった.大うつ病群全体としては対照群と比較し,左右前頭葉内側,左右前頭葉外側,右後頭葉の有意な血流低下を認めた.またHRSDが8点以上の群では,左右前頭葉内側,左前頭葉外側,右後頭葉の有意な血流低下を示し,HRSD8点未満の寛解期にある群では左前頭葉外側のみの低下が認められた.この結果は前頭葉優位の血流低下,寛解期の右前頭側頭葉等の血流の改善との既報とともに,同部位のうつ病における関与を示唆すると考えられる.また高齢者の大うつ病では,脳溝の開大,脳室の拡大,白質の異常といった脳の脆弱性や器質的な変化を示唆する報告があり,今後関連について検討が必要である.さらに考慮すべき課題として,画像の標準化,性差,疾患重症度・病期との関連などがあげられる.

2000/07/05


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