老年期うつ病患者においては,頭部MRI上subcortical white matter hyperintensitiesが高頻度にみられることが指摘されている.この白質病変の程度と臨床症状,退院時の転帰,その後の経過などとの関連について検討したので報告する.
【対象】対象は当科に入院した60歳以上の患者のうち,DSM-Wの大うつ病性障害の診断基準を満たし,頭部MRI検査を施行した患者45名(平均年齢74.0歳)とした.脳血管障害の病歴を有する患者は除外した.
【方法】頭部MRI T2強調画像におけるperiventricular hyperintensitiesとdeep white matter hyperintensitiesを,その広がりの程度によりそれぞれ0-3の4段階に評価し,その合計点(0-6)を指標とした.臨床症状の特徴として,心気,不安焦燥,妄想などをとりあげ,これらの有無と白質病変の程度差について検討した.また,対象を @退院時転帰の良好/不良,Aその後の観察期間中の再入院(+)/(−)に区分し,白質病変の程度に差がみられるかどうかについて検討した.
【結果】@転帰良好群と不良群,A再入院(+)群と(−)群との比較において,年齢,発症年齢,MMS得点に有意差は認められなかった.転帰良好群と不良群との間で,白質病変の程度に有意差は認められなかった.また,再入院(+)群と(−)群との間にも白質病変の程度に有意差は認められなかった.抑うつ症状が改善した転帰良好群について,白質病変の程度とMMS得点との関連について検討したが,有意な関連はみられなかった.臨床症状との関連では,心気症状のみられる者で,白質病変の程度が強い傾向が認められた. |