第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-13】
画像

老年期うつ病のMRI所見と症状,経過について
  

北里大学東病院精神科  吉田芳子,大谷義夫
  

 初老期,老年期はうつ病の好発年齢であり,その原因として,身体や脳の老化要因,遺伝負因,環境要因など種々の因子が複雑に関与しているとされている.また,老年期うつ病と診断されていた患者の画像所見に,多発脳梗塞等の器質変化所見がしばしばみられ,最近では無症候性脳梗塞の臨床症状としてのうつ状態というのみならず,血管性うつ病として着目する動きもある.そこで老年期うつ病の画像所見の意義を明らかにし,臨床症状,MRI所見,HDS-Rの結果について調査,検討したので報告する.
【対象と方法】平成6年月から平成12年1月までの間に北里大学東病院精神科において入院治療を行った65歳以上のうつ病患者のなかで,病歴のなかから明らかに二次性,器質性疾患が疑われる患者,45歳以前に発症したものは除外し,そのなかでMRIを施行した患者について検討した.MRI所見は,梗塞(φ20mm以上のもの),lacuna(φ3〜20mm),bright object(φ3mm以下)に分けその出現部位についても検討した.
【結果】今回対象となった患者は61名で,男性19名,女性43名である.平均初発年齢はそれぞれ63.7歳,65.0歳であった.また入院時の平均年齢はそれぞれ71.2歳,70.2歳であった.MRI所見の内訳は多発性梗塞25例,lacuna3例,bright object13例,脳萎縮9例,正常範囲内10例であった.病変のみられた部位としては,両側基底核周囲,両側側脳室周囲,両側放線冠から半卵円中心かけて,の順で多かった.やや左側に病変が多い傾向にあった.61名の平均入院期間は153.8日であり,HDS-Rの平均得点は23.1点であった.MRI所見で異常のない者,多発梗塞の認められた者,脳萎縮を認めた者の3群で比較したところ,MRI正常群で入院期間が短く,HDS-Rの得点が高く,脳萎縮群で入院期間が長く,HDS-Rの得点が低い傾向にあったが,有意差はみられなかった.

2000/07/05


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