第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-12】
画像

老年期でみられる妄想性障害における頭部CT画像上の特徴
   

浴風会病院精神科  葉室 篤,須貝佑一,鳥居成夫
昭和大学医学部精神医学教室  磯野 浩,上島国利
  

【はじめに】老年期に発症する精神障害のなかには,体系化された妄想をもちつつも,日常生活では大きな障害が認められず,ある程度自立した生活を送る患者をみることがある.原因はいくつか考えられるが,そのなかで明白な脳疾患(アルツハイマー型老年痴呆や脳血管性痴呆など)や身体因性の疾患をもたず,内因性あるいは心因性に起きているものがある.診断として一部には,遅発パラフレニーやパラノイアなどといわれているが,いま現在のDSM-WやICD-10疾患分類上では,妄想性障害という範疇にはいるであろう.過去の報告をみると画像診断の進歩とともに,妄想性障害と画像所見との関連を述べているものは散見されるが統一した結論はでていない.今回われわれは,妄想性障害患者と頭部CT所見との相関性について研究したので若干の考察を加え報告したい.
【対象と方法】対象は,1998年から1999年までの1年間に,浴風会病院精神科初診外来を受診および病棟,併設の特別養護老人ホームに入所した症例および昭和大学精神神経科に入院した症例で,ICD-10により妄想性障害と診断した13例である.画像分析は,大脳の局在性萎縮が読み取りやすいように頭部CT(ヘリカルX-CT撮影装置)を用い,前頭葉・側頭葉・後頭葉・頭頂葉の萎縮や脳室の拡大や低吸収域の有無について判断を行った.また画像とあわせて,眼科的疾患や難聴の有無についても調査した.
【結果】妄想性障害と診断できた患者13例中8例で,X線CT画像上の特徴として,頭頂葉の萎縮が他の部位と比較して顕著であった.その反面側頭葉内側面の萎縮は軽く,同年齢の正常老人と比較しても差が認められなかった.また一過性の幻覚を示すものも5例認められた.視力障害を伴う眼科的疾患を有する患者は,5例で難聴を認める患者は,5例であった.なお,当日までにさらに症例数を増やして報告する.

2000/07/05


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