第15回日本老年精神医学会 演題抄録

 

【TA-3】
症状学

痴呆性疾患における抑うつ症状の研究
  

宮崎医科大学精神科  武田龍一郎,三山吉夫
弘潤会野崎病院精神科  田上深雪
  

 超高齢化社会の到来とともに,痴呆性疾患にみられる精神症状についての研究報告は多い.とくにアルツハイマー型痴呆を中心に痴呆性疾患では抑うつ症状を認めるケースが多いと報告されている.抑うつ症状の発現するリスクファクターとして性差や言語(民族性)などの報告がある.今回演者らは痴呆性疾患にみられる抑うつ症状についての調査を試みた.
【対象と方法】精神病院に入院中およびデイケア通所中の患者73名(うち女性57名,平均年齢82.3歳,MMSEの平均得点14.6点)を対象とした.抑うつ症状の評価方法にはHamilton Rating Scale for Depression(HRSD)を用いた.痴呆の診断および評価にはDSM-IVおよびMini-Mental State Examination(MMSE)を用いた.年齢,性別,病態,痴呆の程度,痴呆発症後の期間などの要因を比較した.
【結果】痴呆患者のHRSDの平均得点は8.1点であった.11点以上のケースが19例(26%)であった.第1〜3アイテム(抑うつ気分,罪業感,希死念慮)の合計点において女性が有意に高得点であった.全アイテムの合計点では各要因との有意差あるいは有意な相関はなかった.
【結語】痴呆患者の26%がHRSDでの高得点を示した.抑うつ気分の発現リスクファクターとして性差(女性)が示唆された.

2000/07/05


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