【はじめに】演者らは過去3年にわたり,一日総歩行数と問題行動評価尺度(TBS,朝田ら,1994)を用い,徘徊群を定量的に定義,分類し,その特徴を明らかにしてきた.今回,各群の典型症例を提示し,治療的接近を述べる.
【症例の提示】症例A(攻撃型群);中等度の脳血管性痴呆の77歳の男性.痴呆の発症後約2年後に暴言,暴力が問題となり入院となった.入院後も暴言,暴力,まとわりつきなどが問題となったが,少量の睡眠導入剤と支持的看護で徐々に軽快し,自宅退院になった.症例B(単純型T群);重度のアルツハイマー型痴呆の74歳の女性.痴呆の発症後約5年後に徘徊,迷子,放尿が問題となり入院となった.入院後も徘徊,いたずら,収集,放尿・弄便の行動症候が主体になっていた.本症例はこのあと特別養護老人ホームに入所となった.症例C(単純型U群);軽度のアルツハイマー型痴呆の77歳の女性.痴呆の発症後約3年後に落ち着きのなさ,多動が問題となり入院となった.入院後も徘徊,いたずらの行動症候が主体になっていたが,レクリエーションなどの参加も良好で病棟内適応状態となっている.
【治療的接近】徘徊群は攻撃行動の強いタイプである攻撃型群と随伴行動症候の少ないタイプである単純型群に分けられる.攻撃型群は中等度の脳血管性痴呆に多く,単純型群はさらに重度のアルツハイマー型痴呆に多い単純型T群と軽度のアルツハイマー型痴呆に多い単純型U群に分けられる.攻撃型群に対しては少量の向精神薬投与や環境調節などにより適応をはかり軽快していくことが多い.単純型II群はいたずらをレクリエーションなどに置き換えることにより適応状態となることが多い.単純型I群は転倒などの危険がないように注意しながら,徘徊を許容していくことが肝要である. |