◆「老年精神医学雑誌」最新刊のご案内◆
 
2011 Vol.22 No.7
 
 
第22巻第7号
(通巻276号)
2011年7月20日
発行
 

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巻 頭 言
津波てんでんこ
高橋 智 650
特集:高齢者の経済被害
高齢者の社会的孤立と精神保健
─ アルツハイマー型認知症の人とその家族が経験する経済被害
安田朝子 781
高齢者の経済被害の現状と課題
─ 警察の視点から
長野利和 792
経済被害を防ぐための地域包括支援センターの役割
西原教子 799
経済被害を防ぐための介護支援専門員の役割
内田幸雄 808
経済被害を防ぐために ─ 独居高齢者をいかに支えるか
池田惠利子 815
経済被害を防ぐための成年後見制度の役割と限界
八杖友一 825
原著論文 
パーキンソン病における展望記憶の評価 ─ リバーミード行動記憶検査を用いた検討
田村 至 ほか 835
老年期に発症した前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)の臨床的特徴の検討
井村まゆ ほか 841
症例報告 
女性認知症高齢者へのアロマを用いた化粧療法 ─ 認知機能の改善がみられた1症例
中原淑恵 ほか 850
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学(10)磁図による認知症研究
石井良平 ほか 857
文献抄録 
北村 伸 865
学会NEWS
日本老年精神医学会 専門医制度規則改定について
第27回日本老年精神医学会開催のご案内
「日本老年精神医学会若手交流プログラム」募集のご案内
平成24年度日本老年精神医学会専門医認定試験実施のお知らせ
学会入会案内
バックナンバーのご案内
編集後記


論文名 経済被害の実態 ─ アルツハイマー型認知症の人とその家族が経験する経済被害 ─
著者名 安田朝子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):781-791,2011
抄録 関東首都圏でアルツハイマー型認知症の本人と家族が遭遇した経済被害に関する聞き取りを行ったところ,全対象の8割以上が経済被害を経験しており,1世帯あたりの平均被害総額は500万円を超えた.近年,成年後見制度の利用によって経済被害が効果的に防がれうることが知られ始めてきてはいるが,より広範に経済被害を防ぐための医療,社会的な支援の枠組みを早急に構築することが求められる.ただし,それらは単なる「監視」であってはならない.
キーワード アルツハイマー型認知症,経済被害,世帯,介入可能性,成年後見制度
論文名 高齢者の経済被害の現状と課題 ─ 警察の視点から ─
著者名 長野利和
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):792-798,2011
抄録 近年,消費者被害に対する国民の関心は高まっており,全国の消費生活センターで受理される相談件数をみると,未公開株や社債販売,集団投資スキーム(ファンド)に係る相談件数は激増をみている.また,住宅リフォームに係る相談件数も年間5,000件を超える高水準で推移しており,利殖勧誘事犯をはじめとする悪質商法の被害が全国に拡大していることが懸念される状況にある.悪質巧妙化の一途をたどる最近の悪質商法の手口,検挙状況,主要検挙事例および課題と今後の取組みについて論じた.
キーワード 未公開株,社債販売,ファンド投資,イラクディナール,スーダンポンド,カモリスト,口座凍結
論文名 経済被害を防ぐための地域包括支援センターの役割
著者名 西原教子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):799-807,2011
抄録 3月11日に起こった東日本大震災では,避難所においても避難所以外でコミュニティを形成し始めた人々も,その地域のつながりが,その後の生活を維持する精神的な基盤になっていることが,数多く報道されている.地域の中核機関として誕生した地域包括支援センターが,地域のつながりを再構築し,地域で高齢者を経済被害から守っていくことができるような役割を担っていくことが必要である.
キーワード 高齢者独居世帯の増加,認知症高齢者の増加,消費生活センター,地域の関係機関,自治会,民生委員
論文名 経済被害を防ぐための介護支援専門員の役割
著者名 内田幸雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):808-814,2011
抄録 高齢者の経済被害を考えるとき,介護支援専門員は,制度の枠のなかだけで活動したのでは十分にその専門性を発揮することができない.介護保険法という法を前提としながらも,高齢者の権利を守るために必要な法律知識をもち,関係機関や関係者と連携をとることが肝要である.さらに,知識に偏ることなく,人権感覚を研ぎ澄まし,人間理解を深めることが求められているといえる.高齢者,とくに自分で自分の権利を守ることができない認知症高齢者の代弁者としての機能が重要である.
キーワード 人権感覚,権利擁護,ネットワーク,関連法の理解,認知症の理解,代弁者
論文名 経済被害を防ぐために ─ 独居高齢者をいかに支えるか ─
著者名 池田惠利子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):815-824,2011
抄録 独居高齢者や夫婦だけの高齢者世帯が増加するなかで,高齢者の財産を狙う悪質商法や消費者被害,年金等や資産を家族等が侵害する事例も多くみられる.とくに,認知症の高齢者は,自分に必要な契約や権利行使を適切にして「自分らしい生活」の維持ができず,権利侵害を受けやすい.また自ら困っていることがわからず,他者の支援を拒否しやすいという特徴がある.本人の「最善の利益」を権利行使し,実現するためには,「できる支援者(人)」を生涯にわたって寄り添わせる成年後見制度の活用も重要である.
キーワード 高齢者虐待,独居高齢者,成年後見制度,権利擁護
論文名 経済被害を防ぐための成年後見制度の役割と限界
著者名 八杖友一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):825-832,2011
抄録 認知症高齢者に対する消費者被害や経済的虐待が増加している.成年後見制度を活用することが防止策のひとつとして考えられるが,成年後見人による見守り機能にも限界があり,それだけで被害を防止することは困難である.被害の予防,早期発見には認知症高齢者を日常的に支援する医療関係者,福祉関係者等による見守りが最も効果があり,それらの者により日頃から見守りネットワークを構築しておくこと,成年後見人をキーパーソンとして連携することが大切である.
キーワード 認知症高齢者,経済的虐待,消費者被害,成年後見制度,見守り
論文名 パーキンソン病における展望記憶の評価 ─ リバーミード行動記憶検査を用いた検討 ─
著者名 田村 至・濱田晋輔・武井麻子・本間早苗・相馬広幸・濱田啓子・田代邦雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):835-840,2011
抄録 パーキンソン病(PD)における未来の記憶(展望記憶)を検討する目的で,認知症のないPD 22症例を対象に,展望記憶課題「持ち物」「約束」を含むリバーミード行動記憶検査(RBMT)のほか知的機能,記憶,遂行(前頭葉)機能検査を施行した.その結果,検査終了時に預けた持ち物の返却を要求する「持ち物」は良好であったが,対照的に検査中にブザーの合図で決められた文言を言う「約束」では,成績の低下がみられた.さらに「約束」は,「持ち物」よりもRBMTなど記憶課題,前頭葉機能課題などより多くの神経心理検査と有意な相関を呈した.RBMTの展望記憶課題「持ち物」「約束」における成績の差異は,PDにおけるセット変換の障害や動機づけの違いなどPD特有の要因が関与している可能性が示唆された.
キーワード パーキンソン病,リバーミード行動記憶検査,展望記憶
論文名 老年期に発症した前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)の臨床的特徴の検討
著者名 井村まゆ・佐藤卓也・佐藤 厚・今村 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):841-849,2011
抄録 【背景】前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration ; FTLD)は若年性認知症の代表疾患とされてきたが,近年,65歳以上の老年期に発症する患者も一定の割合で存在することが指摘されている.
【目的】老年期発症のFTLDのうちとくに前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)を呈した症例の臨床的特徴を検討する.
【対象】新潟リハビリテーション病院神経内科(もの忘れ外来)で精査を完了し,国際ワーキンググループの臨床診断基準でFTDの中核的特徴をすべて満たすと診断され,発症年齢65歳以上の13症例(発症年齢65〜74歳の老年前期発症7例,75歳以上の老年後期発症6例).
【方法】各症例の初発症状,FTDの支持的診断的特徴のうちの行動異常および神経心理学的検査の項目,および古典的ピック病で特徴的な症状について診療録をもとに回顧的に分析した.
【結果】13症例のなかに幻聴や被害妄想,誤認妄想,物盗られ妄想で発症した非典型的症例が4例みられた.ADASを施行した12症例中の10症例で構成課題において減点がみられた.古典的ピック病の特徴的な症状である常同行動を示さない例が3例みられた.
【結論】一般的にFTDが幻覚や妄想を呈することはまれであるとされているが,本研究の結果は,65歳以上の老年期発症のFTDには幻聴や妄想で発症する非典型的な症例が多くみられる可能性を示唆している.また,老年期発症FTD患者では構成課題において成績が低下する可能性があると考えられ,考え不精をはじめとする脱抑制や遂行機能障害,教育歴が影響している可能性が考えられた.常同行動はFTDの初発ないし初期症状として重視されているが,常同行動を示さない非典型的FTD症例は,本研究結果からこれまでに考えられていたほどまれではない可能性がある.
キーワード 前頭側頭葉変性症,前頭側頭型認知症,若年発症,老年期発症,ピック病
論文名 女性認知症高齢者へのアロマを用いた化粧療法
  ─ 認知機能の改善がみられた1症例 ─
著者名 中原淑恵・足立典子・片平志保・阿部美沙子・竹田伸也・浦上克哉・最上多美子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(7):850-855,2011
抄録 通所介護施設利用者の女性認知症高齢者に対し,アロマを用いた化粧療法を1週間に1回,2か月間,合計8回実施し,対象者に及ぼす影響と効果を検討した.その結果,初回時と介入期の比較において,タッチパネル式認知症治療評価法(TDAS)の総得点,Vitality Indexと日本語版DQoL得点の改善がみられた.また,化粧療法中において,対象者の気分の高揚や言語活動の活発化がうかがえた.これらにより,対象者の認知機能および生活場面での意欲の向上や,QOL,感情や社会性,コミュニケーションの活性化が認められた.以上のことから,アロマを併用した化粧療法は認知症高齢者に対して有用である可能性が示唆された.
キーワード 認知症,化粧療法,アロマセラピー
 


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