◆「老年精神医学雑誌」最新刊のご案内◆
 
2011 Vol.22 No.5
 
 
第22巻第5号
(通巻273号)
2011年5月20日
発行
 

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巻 頭 言
マスメディアの影響力
松田 実 522
特集:高齢者の精神障害と漢方
高齢者疾患と漢方
渡辺賢治 525
アルツハイマー型認知症と漢方
水上勝義 531
血管性認知症と漢方
後藤博三・嶋田 豊 538
レビー小体型認知症と漢方
小阪憲司 544
前頭側頭葉変性症と漢方
谷向 知 551
高齢者のうつ病・うつ状態と漢方
中田輝夫 557
高齢者の不眠症に対する非薬物的介入法と漢方
井口博登 562
高齢者の不安・身体化症状と漢方
山田和男 571
原著論文 
高齢者にみられる身だしなみ障害について
─ 施設ケアと在宅ケアの比較と臨床精神医学的な意味
奥田正英ほか 579
高齢者の遂行機能評価尺度としての山口符号テストの開発
─ 地域での認知症予防介入に向けて
山口智晴ほか 587
症例報告 
幻覚,妄想を初発症状に含み前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)に一致する臨床症候群を呈した一例
今村 徹ほか 595
常同的周遊と万引きを繰り返す意味性認知症の患者への単身生活支援
─ パーソン・センタード・ケアの治療的意義について
高橋 淳ほか 606
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学(7)脳機能画像と認知症
安野史彦 613
文献抄録 
松田 修 623
学会NEWS
第26回日本老年精神医学会開催のご案内
学会入会案内
編集後記


論文名 高齢者疾患と漢方
著者名 渡辺賢治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):525-530,2011
抄録 超高齢社会を迎えたわが国では疾患単位で行う医療から全人的な医療への転換を迫られている.漢方医学は長年全人的な考え方で治療学として確立してきたもので,高齢者への医療として注目されている.薬の処方のみならず,予防医学的見地からは身体的養生も重要であるし,認知行動療法的「移精変気」など,薬に頼らない伝統的な知恵も活用する必要がある.医療経済的にも漢方医学の活用は今後ますます重要視されるものと思われる.
キーワード 漢方医学,高齢者,精神疾患,予防医学,全人医療
論文名 アルツハイマー型認知症と漢方
著者名 水上勝義
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):531-537,2011
抄録 アルツハイマー型認知症に対する漢方治療について概説した.認知機能障害に対しては,加味温胆湯,八味地黄丸,帰脾湯,当帰芍薬散などの効果が報告されている.BPSDに対する代表的な薬剤は抑肝散であり,興奮,易刺激性などの効果が報告されている.このほか抑肝散加陳皮半夏,補中益気湯,釣藤散,黄連解毒湯について述べた.BPSDに対して漢方薬は第1選択薬のひとつである.今後は証を考慮した効果の検討が望まれる.
キーワード アルツハイマー型認知症,漢方,認知機能障害,BPSD
論文名 血管性認知症と漢方
著者名 後藤博三,嶋田 豊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):538-543,2011
抄録 近年,血管性認知症に対して比較臨床試験などにより,漢方薬の臨床評価がなされている.釣藤散は,139例を対象とした多施設二重盲検ランダム化比較試験で自覚症状全般改善度,精神症候全般改善度,日常生活動作障害全般改善度における有効性が報告されている.作用機序として微小循環改善作用と電気生理学的指標による認知機能改善作用の関与が示唆されている.ほかに加味帰脾湯,真武湯,黄連解毒湯などの漢方薬に血管性認知症に対する有効性が報告されている.
キーワード 血管性認知症,漢方薬,釣藤散,ランダム化比較試験
論文名 レビー小体型認知症と漢方
著者名 小阪憲司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):544-550,2011
抄録 三大認知症のひとつであるレビー小体型認知症(DLB)についての漢方薬治療として現在注目されているものが抑肝散であり,その効果について,いくつかの論文も報告されている.抑肝散は認知症そのものへの影響はないが,幻視,妄想,不安,抑うつなどのBPSDへの効果が知られている.本稿では筆者らが全国的に行ったDLBについての抑肝散の臨床研究の結果も含めて紹介するとともに,最近わかってきた抑肝散の薬理作用についても簡単に紹介することにする.
キーワード レビー小体型認知症,BPSD,抑肝散,抑肝散加陳皮半夏,薬理作用
論文名 前頭側頭葉変性症と漢方
著者名 谷向 知
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):551-556,2011
抄録 2000年4月に発足した現行の成年後見制度開始のための精神鑑定は,施行10年間で最高裁判所が用意した手引と書式に基づいて行われ,鑑定期間は1か月以内が約50%,鑑定費用は「5万円以下」が63.3%に増加するなど,鑑定期間の短縮化と費用の低廉化の傾向が認められた.また,2007年ころから鑑定の実施率が非常に低下し,診断書を重視した審判が行われる方向にあることに関し,診断書の充実と本人面接の重視が課題であると論じた.
キーワード 成年後見,精神鑑定,能力判定,本人面接,診断書
論文名 高齢者のうつ病・うつ状態と漢方
著者名 中田輝夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):557-561,2011
抄録 本稿では高齢者のうつ病,うつ状態の軽症例(ハミルトンのうつ状態評価尺度〈HAM-D〉で30点以下,自殺念慮に乏しい例)を対象に,漢方製剤である加味帰脾湯および抑肝散加陳皮半夏を主剤として処方した例について報告する.両製剤について5例ずつ,「やや有効」以上といえる症例のみであるが,すでに発表済みの症例についての経験から,抑制症状優位群に対しては前者を,不安・焦燥症状優位群に対しては後者を処方することによって,少なくとも6割以上の効果が期待できると考える.
キーワード 高齢者,軽うつ病,加味帰脾湯,抑肝散加陳皮半夏,使い分け
論文名 高齢者の不眠症に対する非薬物的介入法と漢方
著者名 井口博登
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):562-570,2011
抄録 加齢とともに不眠の訴えは増加し,原発性不眠症(DSM-W)の有病率は,高齢者では25%に上るとされる.多くは睡眠導入薬による治療がなされるが,副作用の問題のほかに,加齢性の睡眠構築の変化が基礎にある高齢者では長期投与となりやすく,効果の限界もある.本稿では,高齢者の不眠症に対して効果が証明されつつある非薬物的な介入法とともに,日本の代替医療である漢方的な視点からの,睡眠障害に対する対応について紹介した.
キーワード 原発性不眠症,加齢,認知行動療法,漢方,養生
論文名 高齢者の不安・身体化症状と漢方
著者名 山田和男
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):571-576,2011
抄録 高齢者の不安・身体化症状の治療薬のひとつとして,漢方薬を選択することがある.漢方薬を処方する際には,気の異常や胸脇苦満といった漢方医学的概念が役立つ.高齢者の不安・身体化症状に対しては,柴胡剤や気剤をはじめとしたさまざまな漢方方剤が用いられる.不安・身体化症状に対する漢方治療に関するエビデンスレベルの高い報告はないが,漢方治療が身体表現性障害患者のQOLの改善に寄与していることを示唆する報告がある.
キーワード 不安,身体化,身体表現性障害,漢方,高齢者
論文名 高齢者にみられる身だしなみ障害について─ 施設ケアと在宅ケアの比較と臨床精神医学的な意味 ─
著者名 奥田正英・佐藤順子・濱中淑彦・水谷浩明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):579-586,2011
抄録 身だしなみは,身体を周囲の環境へ総合的に適応させる行動であるが,その具体的な項目についてあまり検討されていない.今回筆者らは介護施設を利用する高齢者を対象に身だしなみ9項目について検討した.まず入所者(入所群)と通所者(通所群)との比較・検討を行った結果,通所群が身だしなみ各項目,認知症自立度,また改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の下位項目でも復唱を除いて有意に良好であった.しかし,Barthel Index(BI)の下位項目では有意差はわずかであった.身だしなみ項目と調査したどの項目が相関関係を示すか,そして各項目間の近接性について検討を行ったところ,身だしなみに関連する項目は,日常生活能力の関連群や認知機能能力の関連群とは異なる一連の身だしなみ関連群をなすことがわかった.これらの結果から高齢者の身だしなみの障害について考察を加え,身だしなみは臨床症状論的な意味をもち,社会適応能力を示す指標になることが示唆された.
キーワード 身だしなみ,評価項目,社会適応能力,気づき,神経心理学
論文名 高齢者の遂行機能評価尺度としての山口符号テストの開発─ 地域での認知症予防介入に向けて ─
著者名 山口智晴・牧 陽子・海保 歩・荒木祐美・村井達彦・亀ヶ谷忠彦・山上徹也・田中聡一・山口晴保
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):587-594,2011
抄録 今回,高齢者の遂行機能評価指標として用いることを目的に,ウェクスラー符号問題(Wechsler Digit Symbol Substitution Test ; WDSST)と類似した,山口符号テスト(Yamaguchi Kanji Symbol Substitution Test ; YKSST)を作成した.WDSSTとの併存的妥当性の検討では有意な相関(r=0.820,p<0.001,n=170)を認めた.YKSSTの再テスト再現性は級内相関係数ICC(1, 1)=0.836,p<0.001(n=74)と良好で,WDSST(ICC(1, 1)=0.753,p<0.001,n=74)より再現性が高い結果が得られた.YKSSTの得点は年齢による影響を強く受け(r=-0.403,n=170),60歳代後半(n=57)で51.8±10.6点,70歳代前半(n=71)で45.8±9.5点,70歳代後半(n=42)では42.1±11.1点であったが,教育年数はわずかな影響であった(r=0.261).YKSSTの健常(CDR 0)と軽度認知障害(CDR 0.5)の弁別的妥当性については,カットオフを44/45点とすることで感度84%,特異度57%で弁別することが可能であった.また,再テストでの学習効果を低減する目的で作成した3バージョンのうち,今回平行性が確認された2バージョンを,地域介護予防事業などでの評価指標として活用されるよう,無料でダウンロードできるようにした(http://orahoo.com/yamaguchi-h/).
キーワード 認知テスト,遂行機能,認知症,介護予防,地域高齢者
論文名 幻覚,妄想を初発症状に含み前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)に一致する臨床症候群を呈した一例
著者名 今村 徹・佐藤杏奈・佐藤卓也
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):595-605,2011
抄録 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia ; FTD)では妄想や幻覚はまれであるとされている.筆者らはFTDに一致する臨床症候群を呈するが,初発症状として被害妄想と幻聴を呈した一例を経験した.症例は73歳女性.6か月ほど前から身なりや家事に構わなくなり,同じころから隣家の住人に盗聴器を仕掛けられているという被害妄想と,夜間隣家からカラオケの声が聞こえる,自分の話したことと同じことが聞こえるという幻聴を訴えるようになった.診察・検査場面で対人接触の調整障害,情動の鈍麻などとともに遂行機能障害が明らかであったが,常同行動や我が道を行く行動などはみられなかった.頭部MRIでは前頭葉に軽度の萎縮を認め,脳血流SPECTでは前頭側頭葉の集積低下が明らかであった.ハロペリドール投与後,幻聴と妄想は軽減したが,自発性低下や情動の鈍麻には変化なかった.発症2年時点でハロペリドールを漸減中止したところ,幻聴と妄想は再燃し,同時に常同行動がみられるようになった.本症例は対人接触の調整障害,情動の鈍麻,遂行機能障害などの症状と,機能画像での前頭側頭葉の低下所見がみられ,FTDの範疇に含まれると思われる.近年,幻覚や妄想を呈する非典型的FTD症例の剖検でubiquitin陽性,TDP-43陽性のFTLD(FTLD-U-TDP)の病理像が報告され,家族性FTLD-U-TDPでみられるPRGN遺伝子異常をもつFTD患者でしばしば幻覚と妄想がみられることも指摘されている.本症例もそのような神経病理学的・分子生物学的基盤を有している可能性があり,今後の検討が必要である.
キーワード 前頭側頭葉変性症,幻覚,妄想,遂行機能障害,認知症
 


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