◆「老年精神医学雑誌」最新刊のご案内◆
 
2011 Vol.22 No.4
 
 
第22巻第4号
(通巻272号)
2011年4月20日
発行
 

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巻 頭 言
老後の父とその息子
服部英幸 386
特集:成年後見制度の10年と老年精神医学
成年後見制度10年の軌跡─ 公的後見制度の現状と課題
五十嵐禎人 389
任意後見制度の現状と課題
中山二基子 400
社会貢献型後見人養成の現状と課題
金森 順子 406
社会福祉協議会による高齢単身者等の支援─ 自分らしく安心して地域で暮らすために
石渡和実・比留間敏郎 414
成年後見鑑定の現状と課題
白石 弘巳 421
後見人等の医療同意権について:医療の同意能力がない者に対する医療の保障
赤沼 康弘 428
後見人等の医療同意権について:後見人への医療同意権付与に関する問題点
斎藤 正彦 433
原著論文 
タッチパネルを用いた視空間認知機能の評価方法の検討
林 裕子ほか 439
認知症疾患治療病棟における院内デイケアの効果─ 病棟と自宅・施設の架け橋
葉室 篤ほか 448
新規NMDA受容体拮抗剤であるメマンチン塩酸塩の中等度から高度アルツハイマー型認知症に対する後期第U相試験─ 有効性・安全性および推奨用量の検討
北村 伸ほか 453
新規NMDA受容体拮抗剤であるメマンチン塩酸塩の中等度から高度アルツハイマー型認知症に対する第V相試験─ 有効性および安全性の検討
中村 祐ほか 464
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学(7)神経心理学と認知症
数井裕光・武田雅俊 475
文献抄録 
中島振一郎 484
書  評 
「認知症の人のための作業療法の手引き」
斎藤 正彦 485
学会NEWS
第26回日本老年精神医学会開催のご案内
学会入会案内
バックナンバーのご案内
編集後記


論文名 成年後見制度10年の軌跡─ 公的後見制度の現状と課題 ─
著者名 五十嵐禎人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):389-399,2011
抄録 成年後見制度について,最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」に基づいて検討を行った.この10年間で成年後見制度の利用は著しく増加したが,そのほとんどはほぼ全面的な能力制限を伴う後見であり,自己決定の尊重より保護に重きがおかれた運用状況にある.将来的には制度根幹にかかわる見直しが必要であること,より柔軟な能力判断を行うことにより現行制度に関しても柔軟な運用が可能であることなどを指摘した.
キーワード 成年後見制度,精神鑑定,高齢社会,行為能力,自己決定
論文名 任意後見制度の現状と課題
著者名 中山二基子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):400-405,2011
抄録 任意後見制度は自分で任意後見人を決め,判断能力低下後の財産管理などを委任しておく制度である.判断能力低下後,家庭裁判所が任意後見監督人を選任したとき,後見は開始する.本人の自己決定を尊重した,老いじたくには有用な制度である.しかし,最近の利用状況をみると,利用者数の低迷に加えて,制度の理念から外れた利用が広がっていることが懸念される.今,この制度はどのような問題を抱えているのか.問題の克服にはなにが必要なのか.
キーワード 任意後見人,任意後見監督人,判断能力,自己決定の尊重,老いじたく
論文名 社会貢献型後見人養成の現状と課題
著者名 金森順子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):406-413,2011
抄録 ・成年後見制度利用促進のため,「成年後見活用あんしん生活創造事業」を創設.
・区市町村に成年後見制度推進機関を設置・運営し,制度を普及・促進.
・都と区市町村が連携し,後見人等候補者養成事業を実施.
・区市町村が基礎講習受講者の募集・選考,都で基礎講習を実施,推進機関は基礎講習実習活動以降の支援.
・社会貢献型後見人の後見業務の標準化等,選任促進に向けた取組みが課題.
キーワード 成年後見活用あんしん生活創造事業,成年後見制度推進機関,後見人等候補者養成事業,社会貢献型後見人,基礎講習と実習活動
論文名 社会福祉協議会による高齢単身者等の支援
─ 自分らしく安心して地域で暮らすために ─
著者名 石渡和実,比留間敏郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):414-420,2011
抄録 東京都立川市の地域あんしんセンターたちかわ,町田市の福祉サポートまちだの実践に注目し,社会福祉協議会が成年後見制度を活用して,高齢単身者などの地域生活を支援している現状を紹介する.社協ならではのネットワークを生かし,自己決定を尊重したエンパワメントの視点に立つ,ソーシャルワーカーとしての支援が展開されている.その際,日常生活自立支援事業での蓄積を生かし,首長申立制度を活用し,市民後見人が大きな力を発揮していることが注目される.
キーワード 成年後見制度,社会福祉協議会,日常生活自立支援事業,法人後見,首長申立,市民後見人,エンパワメント
論文名 成年後見鑑定の現状と課題
著者名 白石弘巳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):421-427,2011
抄録 2000年4月に発足した現行の成年後見制度開始のための精神鑑定は,施行10年間で最高裁判所が用意した手引と書式に基づいて行われ,鑑定期間は1か月以内が約50%,鑑定費用は「5万円以下」が63.3%に増加するなど,鑑定期間の短縮化と費用の低廉化の傾向が認められた.また,2007年ころから鑑定の実施率が非常に低下し,診断書を重視した審判が行われる方向にあることに関し,診断書の充実と本人面接の重視が課題であると論じた.
キーワード 成年後見,精神鑑定,能力判定,本人面接,診断書
論文名 後見人等の医療同意権について:医療の同意能力がない者に対する医療の保障
著者名 赤沼康弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):428-432,2011
抄録 医療の同意能力がなく,代わって同意する家族もいない成年者に対する医療はどうすればよいのか.医療を行う立場にある医師や医療ケアチームに判断を委ねることは,医療の同意を求める趣旨に反すると考えられる.したがって,通常の医療行為については,療養看護の事務を職務とする成年後見人に同意する権限を与えるのが相当である.ただし,過大な責任を負担させないため,重大な医療行為については第三者的機関の許可を必要とすべきであろう.
キーワード 医療の同意,同意能力,違法性阻却事由,成年後見人,療養看護の職務
論文名 後見人等の医療同意権について:後見人への医療同意権付与に関する問題点
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):433-437,2011
抄録 成年後見人に医療同意権を付与することに反対する立場から意見を述べた.一身専属的な医療上の決定について特定の個人に他に優先する権限を与える根拠はないこと,現行制度で選任されている成年後見人の質には疑問があり,広範な法的権限に加えて医療上の意思決定についてまで他に優越する権利を付与することは危険であること,成年後見人は被後見人との間に利益相反をきたす可能性が高いことを反対の理由として挙げた.
キーワード インフォームド・コンセント,代諾権,意思能力,成年後見制度
論文名 タッチパネルを用いた視空間認知機能の評価方法の検討
著者名 林 裕子・木島輝美・佐藤和彦・村上新治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):439-447,2011
抄録 視空間認知機能課題の評価方法として,対象者203人(73.9±5.8歳)に対し,提示課題の順番を再現する課題を施行し,正解率から総評点の算出方法を導いた.結果,各年代では順次性課題は記憶量が増えても正解率が高く,規則性課題は加齢とともに課題数が増えると,複雑性課題は記憶量が増えると正解率が低下した.総評点は難易度順に係数0.709を乗して算出された.年齢層別総評点では,加齢が増すと有意に低いことがわかった.
キーワード 視空間認知機能,眼球運動,アルツハイマー型認知症,加齢
論文名 認知症疾患治療病棟における院内デイケアの効果─ 病棟と自宅・施設の架け橋 ─
著者名 葉室 篤・斉藤里菜・増尾辰也・大村裕子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):448-452,2011
抄録 認知症患者が精神科病院を軽快退院したのち,短期間で再入院となってしまう場合も少なくない.そこで今回筆者らは,これを防ぐため認知症疾患治療病棟にてデイケアを行い(以下,院内デイケア),予後を調査しその効果をみたので報告する.対象は認知症疾患治療病棟に入院し,薬物調整が終了して2週間以上経過した連続10症例である.観察期間は12週とした.観察項目は,認知機能の評価としてMMSE,BPSDの評価はNPI,日常生活動作能力の評価はPhysical Self-Maintenance Scale(PSMS)を用いた.観察項目の変化は,MMSE,PSMS,NPI下位項目とも統計学的有意差を認めなかった.観察期間中,BPSDの悪化で増薬せざるを得ないまたは退院後に再入院する症例はみられなかった.この院内デイケアが病院と自宅・施設の架け橋となる役割の一端を担っている可能性が示唆された.
キーワード 院内デイケア,入院患者,予後,BPSD
論文名 新規NMDA受容体拮抗剤であるメマンチン塩酸塩の中等度から高度アルツハイマー型認知症に対する後期第U相試験─ 有効性・安全性および推奨用量の検討 ─
著者名 北村 伸・本間 昭・中村 祐・吉村 功
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):453-463,2011
抄録 メマンチン塩酸塩はアルツハイマー型認知症治療薬としては唯一のNMDA受容体拮抗剤であり,海外では中等度から高度の患者に広く使用されている.今回,わが国における中等度から高度アルツハイマー型認知症患者315例を対象に,メマンチン塩酸塩10 mg/日または20 mg/日を24週間投与したときの有効性,安全性および推奨用量について,プラセボを対照とした多施設共同二重盲検並行群間比較試験により検討した.SIB-Jでは,投与24週後の得点変化量で用量反応関係が認められ,メマンチン塩酸塩20 mg/日の有効性が示されたが,ADCS ADL-Jでは,投与24週後の得点変化量で用量反応関係は認められなかった.CIBIC plus-Jでは,投与24週後の用量反応関係は認められなかったが,全評価時点を通じた解析では,用量反応関係が認められた.また,MMSEおよびFASTの投与24週後の得点変化量でも用量反応関係が認められ,メマンチン塩酸塩20 mg/日の有効性が示唆された.有害事象発現率および副作用発現率では,各群間に統計学的な差は認められなかった.以上のことから,中等度から高度アルツハイマー型認知症患者に対するメマンチン塩酸塩の推奨用量は20 mg/日であると考えられた.
キーワード メマンチン塩酸塩,NMDA受容体拮抗剤,アルツハイマー型認知症,SIB,ADCS-ADL
論文名 新規NMDA受容体拮抗剤であるメマンチン塩酸塩の中等度から高度アルツハイマー型認知症に対する第V相試験─ 有効性および安全性の検討 ─
著者名 中村 祐・本間 昭・北村 伸・吉村 功
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):464-473,2011
抄録 メマンチン塩酸塩はアルツハイマー型認知症治療薬としては唯一のNMDA受容体拮抗剤であり,海外では中等度から高度の患者に広く使用されている.今回,わが国における中等度から高度アルツハイマー型認知症患者432例を対象に,メマンチン塩酸塩20 mg/日を24週間投与したときの有効性および安全性について,プラセボを対照とした多施設共同二重盲検並行群間比較試験により検討した.SIB-Jでは,投与24週後の得点変化量においてプラセボ群とメマンチン塩酸塩群の間に有意差が認められた.Modified CIBIC plus-Jでは,投与24週後において,プラセボ群とメマンチン塩酸塩群の間に有意差は認められなかったが,メマンチン塩酸塩群の悪化の程度は小さかった.Modified CIBIC plus-Jの下位尺度であるBehave-ADでは,LOCF解析でプラセボ群とメマンチン塩酸塩群の間に有意差が認められた.有害事象発現率および副作用発現率では,両群間に統計学的な差は認められなかった. 以上のことから,メマンチン塩酸塩は,中等度から高度アルツハイマー型認知症患者の認知機能障害に対して有効性を示し,安全性は高く,行動・心理症状(BPSD)にも有効性を示すことを特徴とする薬剤であると考えられた.
キーワード メマンチン塩酸塩,NMDA受容体拮抗剤,アルツハイマー型認知症,SIB,CIBIC-plus
 


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