◆「老年精神医学雑誌」最新刊のご案内◆
 
2011 Vol.22 No.2
 
 
第22巻第2号
(通巻269号)
2011年2月20日
発行
 
 
巻 頭 言
アルツハイマー病とメタボリックシンドロームとの関連
大友英一 130
特集:レビー小体型認知症 ─Update
レビー小体型認知症の臨床診断基準 ─ 次期改訂に向けて
小阪憲司 133
レビー小体型認知症の神経病理
藤城弘樹・井関栄三 139
レビー小体型認知症の認知機能障害
下村辰雄 147
レビー小体型認知症の精神症状
水上勝義 155
レビー小体型認知症の神経症状
工藤由理・今村 徹 161
レビー小体型認知症の画像検査 ─ MIBG心筋シンチグラフィーも含めて
吉田光宏・山田正仁 168
レビー小体型認知症の薬物療法
橋本 衛 176
原著論文 
認知症患者の中核症状,周辺症状および日常生活動作能力の関係について
寺西美佳ほか 185
老年期の情動関連事象関連電位P300成分の特徴
浅海靖恵ほか 194
高齢初発の躁状態を合併した認知症の3例
北村 立ほか 203
知機能の継時的変化を評価する際の日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の有用性 ─ MCIと軽度アルツハイマー病患者を対象とした縦断的検討
鈴木宏幸ほか 211
連  載
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学・クロイツフェルト・ヤコブ病と遺伝要因
吉山顕次 221
書  評
エピソードで学ぶ成年後見人;身上監護の実際と後見活動の視点
本間 昭 227
学会NEWS
平成22年度日本老年精神医学会指導医・認定施設決定
第11回日本認知症ケア学会大会 印象記 粟田主一
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編集後記


論文名 レビー小体型認知症の臨床診断基準 ─ 次期改訂に向けて ─
著者名 小阪憲司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):133-138,2011
抄録 レビー小体型認知症という病名と診断基準が公表されたのは1996年であり,わずか十数年の間にこれが国際的によく知られるようになり,アルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い認知症といわれるようになった.2005年にはその改訂版が発表されたが,まだいくつかの問題点がある.2012年に開催される予定である第5回国際ワークショップにおいて新たな改訂が行われる可能性があり,次期改訂に向けての問題点のいくつかを指摘した.
キーワード レビー小体型認知症,臨床診断基準,CDLBガイドライン改訂版,問題点
論文名 レビー小体型認知症の神経病理
著者名 藤城弘樹,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):139-146,2011
抄録 レビー小体型認知症(DLB)の病理学的特徴と病理診断基準を示し,レビー病理とともにアルツハイマー病理がDLBの臨床像に関与していることを述べた.また,DLBの臨床経過と病理学的背景について考察するために,レビー病理の脳内分布とレビー病理の進展過程におけるアミロイドの関与を示し,DLBと認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の相違について概説した.DLBの多くが,レビー病理の新皮質型であると同時にアルツハイマー病理を伴う通常型に相当する事実は,臨床経過を反映したものであると考えられる.
キーワード レビー小体型認知症,神経原線維変化,老人斑,病理診断基準,アルツハイマー病
論文名 レビー小体型認知症の認知機能障害
著者名 下村辰雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):147-154,2011
抄録 レビー小体型認知症(DLB)では,記憶,視知覚・視覚構成・視空間能力,注意,遂行機能などが広範に障害されるが,アルツハイマー病(AD)と比較すると記憶障害が軽いが,視覚認知障害および視覚構成/視空間障害が強く,より低次の視知覚も障害されている.エピソード記憶障害はADより軽く,想起障害の関与が大きい.注意障害はADより広範で持続性・選択性・分配性注意のすべてが障害されている.DLBでは認知機能の変動が特徴的で,より多面的にその変動について聴取する必要がある.
キーワード レビー小体型認知症,認知機能障害,認知機能の変動
論文名 レビー小体型認知症の精神症状
著者名 水上勝義
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(1):27-31,2011
抄録 レビー小体型認知症(DLB)には高頻度に精神症状が出現する.とくに幻視,レム睡眠行動障害,誤認症状はDLBにしばしばみられる症状であり,また他の認知症やうつ病からDLBを鑑別する際に有用な症状である.老年期うつ病とDLBの鑑別はしばしば困難である.DLBの前駆症状としてうつ症状がみられることも少なくない.高齢のうつ状態の患者に対してはDLBの可能性を念頭において診療を進める必要がある.
キーワード レビー小体型認知症,幻覚,妄想,レム睡眠行動障害,身体表現性障害,うつ
論文名 レビー小体型認知症の神経症状
著者名 工藤由理,今村 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):161-167,2011
抄録 レビー小体型認知症(DLB)ではパーキンソン症状がみられる.その特徴として,寡動や筋強剛が高率である一方,安静時振戦の頻度は低い.また,表情の乏しさや姿勢反射障害はパーキンソン病(PD)よりも目立つ.レボドパは比較的良好に服用できるが,PDほど有効ではない.ドネペジル塩酸塩はmotor scoreもADLも低下させない.在宅認知症患者の年間転倒発生率は正常高齢者の約2倍に当たるが,DLBでは転倒がとくに多く,パーキンソン症状に加えて構成障害と抗不安薬・睡眠導入薬服用が危険因子であった.とくにDLBの視覚認知障害合併例では,歩行時に視覚に関する情報処理が不適切なまま,床からの感覚情報の処理や目的への遂行機能を働かせることになり,低下している注意容量の限界を超えることでバランス障害を悪化させ,転倒する可能性があると考えられた.
キーワード パーキンソン症状,転倒,バランス障害,視覚認知障害,注意障害
論文名 レビー小体型認知症の画像検査 ─ MIBG心筋シンチグラフィーも含めて ─
著者名 吉田光宏,山田正仁
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):168-175,2011
抄録 レビー小体型認知症の画像検査では,脳核磁気共鳴画像(MRI)における側頭葉内側および被殻の萎縮,PET検査では,後頭葉の糖代謝低下,および18F-ドーパによる線条体の取り込み低下,PIBを用いたアミロイドイメージングによる大脳皮質への集積,脳血流SPECTにおける後頭葉脳血流低下,123I-MIBG心筋シンチグラフィーにおける交感神経節後機能の低下などが特徴的である.
キーワード MRI,脳血流SPECT,脳代謝PET,MIBG心筋シンチグラフィー,レビー小体型認知症(DLB)
論文名 レビー小体型認知症の薬物療法
著者名 橋本 衛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):176-184,2011
抄録 レビー小体型認知症(DLB)の治療の標的となる臨床症状には,中核症状である認知機能障害,幻覚・妄想・うつ・睡眠障害などのBPSD,パーキンソン症状,便秘や起立性低血圧などの自律神経症状が挙げられる.DLBの1つの症状を改善させる治療薬は一方で他の症状を悪化させる可能性があるため,DLBの薬物治療においては,「DLBだからドネペジル」のような画一的な治療ではなく,患者ごとに治療の標的とすべき臨床症状を見定め,副作用の出現に細心の注意をはらいながら治療を行うことが求められる.
キーワード レビー小体型認知症,薬物療法,ドネペジル,ケア
論文名 認知症患者の中核症状,周辺症状および日常生活動作能力の関係について
著者名 寺西美佳,栗田征武,西野 敏,武吉健児,沼田由紀夫,佐藤忠宏,中畑則道,舘野 周,大久保善朗   
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):185-193,2011
抄録 認知症患者の中核症状,周辺症状および日常生活動作能力の関係を明らかにするために,当院入院中の認知症患者58人を対象に向精神薬を使用せずに7日以上経過してから中核症状をMini-Mental State Examination(MMSE)で,周辺症状をNeuropsychiatric Inventory in Nursing Home Version(NPI-NH)で,日常生活動作能力をFunctional Independence Measure(FIM)でそれぞれ評価した.その結果,MMSEとNPI-NHで有意な負の相関(ρ=-0.508:p=0.000),MMSEとFIMで有意な正の相関(ρ=0.550:p=0.000),NPI-NHとFIMで有意な負の相関(ρ=-0.353:p=0.007)が得られた.中核症状が軽度な患者は周辺症状も軽度であり,さらに日常生活動作の水準が高いことが示された.
キーワード behavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD),Mini-Mental State Examination(MMSE),Neuropsychiatric Inventory in Nursing Home Version(NPI-NH),Functional Independence Measure(FIM)
論文名 老年期の情動関連事象関連電位P300成分の特徴
著者名 浅海靖恵,森田喜一郎,藤木 僚,中島洋子,村岡明美,小路純央   
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(1):58-61,2011
抄録 認知症に対する運動療法の適用は,身体の活性化,生活リズムの調整,良質な睡眠の獲得から認知症の行動心理学的症候の軽減を間接的に目指すアプローチ法から,認知機能改善を直接的に目指すアプローチ法へと変化している.また,運動を認知症の認知機能改善に用いることが有効であることを示唆するRCTが増加してきている.本稿ではそれらを文献的に考察する.
キーワード 認知症,運動療法,有酸素運動,介入研究
論文名 高齢初発の躁状態を合併した認知症の3例
著者名 北村 立,田中那々,北村真希,澁谷良子,倉田孝一   
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):203-210,2011
抄録 高齢者のうつ病や,認知症に伴ううつ状態についての報告は数多くあるが,高齢者の躁状態についての報告は少なく,とくに認知症に伴う躁状態の報告はない.今回筆者らは,高齢初発の躁状態を合併した認知症の3症例を呈示した.躁状態は軽度の認知症に合併すると考えられた.臨床症状は若年者と同様であり,自尊心の肥大および目的志向性活動の増加が診断的には重要であった.躁状態の改善とともに認知機能も改善した.治療は若年者に準ずる.とくに炭酸リチウムが効果的と思われるが,気分安定薬の投与量には慎重を期する.認知症に合併する躁状態は注意すればまれなものではないと考えられる.認知症に伴う行動障害のなかで躁病成分を見いだせれば,気分安定薬による治療が可能になることから,老年精神医学の日常診療において重要な視点であると考えた.
キーワード 高齢者,認知症,双極性障害,躁状態,気分安定薬
論文名 認知機能の継時的変化を評価する際の日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の有用性 ─ MCIと軽度アルツハイマー病患者を対象とした縦断的検討 ─
著者名 東京都健康長寿医療センター 研究所社会参加と地域保健研究チーム   
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(2):211-220,2011
抄録 軽度認知障害(MCI)と軽度アルツハイマー型認知症(軽度AD)の認知機能の変化を継時的に把握することは,適切な診療・ケアを提供するうえで重要である.多忙な医療現場では簡易な神経心理学的検査が用いられるが,従来の検査では軽度例を適切に評価することがむずかしい.一方,MCI鑑別を目的として作成されたMoCAであれば軽度例の認知機能の変化の検出に有効であると考えられる.本研究では,日本語版MoCA(MoCA-J)の有用性について,もの忘れ外来受診者(MCI 15人,軽度AD 17人)を2年間追跡し検討した.MoCA-J,MMSE,HDS-Rをそれぞれ初診時,約1年後,約2年後の計3回実施した.MCIにおいて,MoCA-Jでは2年後に得点低下がみられたが,従来の検査では変化が認められなかった.軽度ADではMoCA-JとMMSEで低下がみられたが,MMSEは軽度ADの鑑別ができなかった.HDS-Rは変化を検出できなかったが,鑑別では有効であった.MoCA-Jは認知機能の継時的変化を評価する際にも有効な検査であることが示された.
キーワード 神経心理学検査,日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J),軽度認知障害(MCI),軽度アルツハイマー型認知症,縦断研究
 


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