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2010 Vol.21 No.6
 
 
第21巻第6号
(通巻260号)
2010年6月20日
発行
 
 
巻 頭 言
認知症の街ぐるみ支援ネットワークの構築
赫 彰郎 630
特集:高齢者の幻覚妄想 -妄想性同定錯誤症候群とその周辺-
妄想性同定錯誤症候群とは
深津 亮ほか 633
カプグラ症候群,フレゴリ症候群
濱田秀伯・狩野正之 638
重複記憶錯誤,相互変身症候群,自己分身症候群
小田陽彦ほか 643
シャルル・ボネ症候群
寺尾 岳 647
幻の同居人(phantom boarder)
藤井 充ほか 651
妄想性同定錯誤症候群の成立機構
山田真希子・大東祥孝 661
高齢者の幻覚妄想と画像
古田 光 665
高齢者の幻覚妄想と病理学的背景
藤城弘樹・井関栄三 671
高齢者の幻覚妄想と治療構造
松下正明 677
原著論文 
介護サービスの利用による認知症患者の介護状況の変化に関する調査とその変化がCIBIC-plus評価に及ぼす影響についての考察
中村 祐 685
症例報告 
入院前後の活動リズムをICタグモニタリングシステムにより比較した前頭側頭型認知症の1例
山川みやえほか 695
基礎講座:老年精神医学研究の進め方と発表の仕方
第10回 原著論文執筆の手法
目黒謙一 703
第11回 総説論文執筆のコツ
新井平伊 707
文献抄録
本間 昭 711
学会NEWS
713
学会入会案内
716
バックナンバーのご案内
720
編集後記
724




論文名 妄想性同定錯誤症候群とは
著者名 深津 亮,藤井 充,戸塚貴雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):633-637,2010
抄録 妄想性同定錯誤症候群(delusional misidentification syndrome ; DMS)の成立過程を概観して,DMSを構成する主要な症候群である,@カプグラ症候群(Capgras syndrome),Aフレゴリ症候群(Fre´goli syndrome),B相互変身症候群(intermetamorphosis),C自己分身症候群(syndrome of subjective doubles),D重複記憶錯誤(reduplicative paramnesia),Eシャルル・ボネ症候群(Charles Bonnet syndrome),F幻の同居人(phantom boarders ; PB)について,特徴と問題点を指摘した.
キーワード 妄想性同定錯誤症候群,カプグラ症候群,フレゴリ症候群,相互変身症候群,自己分身症候群,重複記憶錯誤,幻の同居人
論文名 カプグラ症候群,フレゴリ症候群
著者名 濱田秀伯,狩野正之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):638-642,2010
抄録 妄想性人物誤認を代表するカプグラ症候群とフレゴリ症候群の原著を要約して紹介し,瓜二つ(ソジー)症候群,妄想性人物同定誤認症候群などとの関連を整理した.近年は概念が拡大し,高齢者の身体に基礎をおく精神病による報告が増えている.人物誤認の症状形成には,器質要因から心理要因まで議論があり,両者の折衷的な見方もある.相貌失認をもとにカプグラ症候群を説明する試みは,妄想を行動神経学的側面から解明する手がかりになる可能性がある.
キーワード 人物誤認,カプグラ症候群,フレゴリ症候群,妄想,相貌失認
論文名 重複記憶錯誤,相互変身症候群,自己分身症候群
著者名 小田陽彦,山本泰司,前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):643-646,2010
抄録 Christodoulouらによって提唱された妄想性同定錯誤症候群(delusional misidentification syndrome)の重要な部分をなす相互変身症候群(intermetamorphosis)と自己分身症候群(subjective doubles)および妄想性同定錯誤症候群と密接な関係をもち,Pickらが最初に報告しBensonらが再び取り上げた記憶症状である重複記憶錯誤(reduplicative paramnesia)について,その臨床的特徴,病態,画像診断,病理的背景などについて症例を交えて概説した.
キーワード 重複記憶錯誤(reduplicative paramnesia),相互変身症候群(intermetamorphosis),自己分身症候群(subjective doubles),妄想性同定錯誤症候群
論文名 シャルル・ボネ症候群
著者名 寺尾 岳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):647-650,2010
抄録 シャルル・ボネ症候群(CBS)は,それまで精神的に問題のなかった人に,人物や動物,建物や景色などの幻がありありと見えるものである.本人は,自分が幻を見ていると認識している.白内障など視力障害のある患者での報告が多かったが,必ずしも視力低下を伴わない.臨床場面では,明らかな精神疾患がなく,複雑幻視の存在とそれに対する病識が存在していれば,CBSと診断されることが多い.CBSの病態生理に後頭葉の紡錘状回の活動性亢進が関与しているとの報告がある.視力の矯正や薬物投与によりCBSが改善することもあるが,認知症への移行例もあり,縦断的な観察が必要である.
キーワード シャルル・ボネ症候群,幻視,紡錘状回,視力障害,解放性幻覚
論文名 幻の同居人(phantom boarder)
著者名 藤井 充,戸塚貴雄,深津 亮
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):651-659,2010
抄録 「自分の家にだれか知らない人が住み込んでいる」という徴候,phantom boarder(PB)は高齢者にみられる特有の症状,症候ないしは症候群とされる.本稿では文献的展望を試みてPBの病態,成因などに言及した.PBはdelusional misidentification syndrome(DMS)の範疇に位置づけられると考えられる.PBは,妄想や幻覚の契機として実体的意識性,作話が混然と入り混じり,社会的孤立や認知機能の低下による猜疑心や不安,種々の高次脳機能障害などが複雑に絡み合って生じている可能性を指摘できる.その徴候は老人の心性,認知症患者の存在と世界を知る大きな手がかりとなるものと思われる.
キーワード phantom boarder(幻の同居人),delusional misidentification syndrome(DMS,妄想性誤認症候群),dementia,late paraphrenia
論文名 妄想性同定錯誤症候群の成立機構
著者名 山田真希子,大東祥孝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):661-664,2010
抄録 妄想性同定錯誤症候群のなかでも,とくにカプグラ症状の成立機構についてこれまでに興味深い仮説が提案されている.本稿では,それらを概観し,妄想誤認が成立するための認知神経心理学的メカニズムについての最近の動向を再考する.
キーワード 妄想性同定錯誤症候群,カプグラ症状
論文名 高齢者の幻覚妄想と画像
著者名 古田 光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):665-670,2010
抄録 妄想性同定錯誤症候群の関連病変部位は両側前頭葉や右半球に存在することが多い.脳血管障害による限局性の病変に伴う病態では関連病変部位の特定ができることがある.変性疾患でも機能画像で関連部位の異常が示されうる.
キーワード 妄想性同定錯誤症候群,カプグラ症候群,重複記憶錯誤,画像所見
論文名 高齢者の幻覚妄想と病理学的背景
著者名 藤城弘樹,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):671-676,2010
抄録 頻度の高い変性性認知症であるアルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)の病理診断基準を示し,加齢に伴う脳病理変化と変性性認知症の連続性という観点から,老年期の幻覚妄想の病理学的背景について考察した.妄想性同定錯誤症候群はレビー小体病に疾患親和性を有するが,常に症状を認めないことから,発現機序を病理学的背景のみで説明することは困難であるかもしれない.
キーワード レビー小体病,神経原線維変化,老人斑,病理診断基準,カプグラ症候群
論文名 高齢者の幻覚妄想と治療構造
著者名 松下正明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(6):677-682,2010
抄録 1つの症例を呈示しながら,高齢者の幻覚妄想,とくにその主体をなす遅発パラフレニー,皮膚粘膜幻覚妄想症,シャルル・ボネ症候群について,身体・脳・心理・社会疾患モデル(生物・心理・社会疾患モデル)を用いて,その疾病構造と治療構造について論じた.また,最近,生物・心理・社会疾患モデルについては厳しい批判がなされているが,その一部を紹介するとともに,そのモデルが高齢者の幻覚妄想の治療を考えるうえで重要な枠組みを提供しているという筆者の考えを示した.
キーワード 高齢者の幻覚妄想,身体・脳・心理・社会疾患モデル,遅発パラフレニー,皮膚粘膜幻覚妄想症,シャルル・ボネ症候群
 


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