◆「老年精神医学雑誌」最新刊のご案内◆
 
2010 Vol.21 No.5
 
 
第21巻第5号
(通巻258号)
2010年4月20日
発行
 

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巻 頭 言
老年心身医学から老年人間医学へ
新福尚武 502
特集:認知症の発症にかかわる遺伝子
変性性認知症にかかわる遺伝子と発症メカニズム ─ AD-FTLDスペクトラム
武田雅俊 505
アミロイド前駆体タンパク
柴田展人ほか 514
プレセニリン研究の過去と現在
大河内正康ほか 520
タウ
田中稔久ほか 532
α-シヌクレイン
山本泰司ほか 542
プログラニュリン
根建 拓ほか 555
TDP-43
細川雅人ほか 561
アポリポタンパクE4
高橋未央ほか 572
調査報告 
認知症診断の脳血流SPECTの利用実態調査
小田陽彦ほか 581
短  報 
特異な経過をたどった器質性幻覚症の1例
種市 愈 587
基礎講座:老年精神医学研究の進め方と発表の仕方
第8回 論文投稿のノウハウ その3  オンライン投稿
久永明人ほか 593
第9回 症例報告執筆のコツ
笠原洋勇 597
文献抄録
永田智行ほか 601
書  評
「みんなの精神医学用語辞典」
深津 亮 603
学会NEWS
第25回日本老年精神医学会開催のご案内
605
学会入会案内
612
バックナンバーのご案内
616
編集後記
620




特集

論文名 変性性認知症にかかわる遺伝子と発症メカニズム ─ AD-FTLDスペクトラム ─
著者名 武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):505-513,2010
抄録 変性性認知症(アルツハイマー病,前頭側頭型認知症)のリスク遺伝子の検討が進められている.アルツハイマー病の原因遺伝子としてアミロイド前駆体タンパク,プレセニリン-1,プレセニリン-2があり,強力なリスク遺伝子としてアポリポタンパクE4がある.一方,前頭側頭型認知症の原因遺伝子として,FTDP-17においてはタウの変異が同定され,続いてプログラニュリン遺伝子変異が同定された.前頭側頭型認知症においてはタウ陽性の封入体はタウタンパクから構成され,タウ陰性ユビキチン陽性の封入体の構成タンパクがTDP-43であることが明らかになった.このような知見を踏まえて変性性認知症に共通する神経変性機序についての新しい理解が可能であることを論じた.
キーワード アルツハイマー病,前頭側頭型認知症,タウ,プレセニリン,TDP-43
論文名 アミロイド前駆体タンパク
著者名 柴田展人,新井平伊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):514-519,2010
抄録 アミロイド前駆体タンパク(APP)遺伝子は家族性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子として,1991年に初めて報告された4).その後のプレセニリン-1,-2遺伝子の発見とともに,AD発症の病態解明に大きく寄与している.ADの主病態としてアミロイドカスケード仮説が有力であるが,APPはその端緒であり,その重要性は高い.本稿では近年のAPP遺伝子研究,APPから産出されるアミロイドβタンパク(Aβ)の最近の課題も含めて,総説する.
キーワード アミロイド前駆体タンパク,家族性アルツハイマー病,点突然変異,α,β,γ-セクレターゼ,アミロイドワクチン
論文名 プレセニリン研究の過去と現在
著者名 大河内正康,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):520-531,2010
抄録 プレセニリン(PS)遺伝子発見の経緯からその生理機能がいかにして明らかにされたか簡単にまとめた.続いて,PS遺伝子の翻訳後修飾として重要であるPSタンパク質の複合体形成と安定化について概説した.さらに,アルツハイマー病(AD)に関連してPS複合体がγ-セクレターゼ機能を発揮するという重要な発見に至る経緯について記した.その後「Aβ様ペプチド」の概念,Notch-1のS4切断部位の発見などを含めて「デュアル切断メカニズム」の詳細にふれた.最後に,この「デュアル切断」の仕組みの解明が現在どこまで進んでいるか,最新のデータを含めて解釈してみた.また,膜内タンパク分解機構を標的としたPS関連基礎研究がどのようにAD診断治療薬開発に役立つ可能性があるか議論した.
キーワード プレセニリン,γ-セクレターゼ,Aβ,Notchシグナル,βAPP
論文名 タ  ウ
著者名 田中稔久,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):532-541,2010
抄録 タウタンパクは微小管付随タンパクのひとつであり,通常は微小管重合を促進して細胞骨格形成に関与している.タウタンパクが細胞体内に異常蓄積する疾患をタウオパチーと称されるが,このときタウは過剰にリン酸化されており通常の機能を喪失している.タウ遺伝子変異によるFTDP-17の発見によりalternative splicingおよび微小管重合能への影響などが疾患に関与していると考えられる.今後タウの神経変性への関与のメカニズムがいっそう解明されることが期待される.
キーワード タウタンパク,微小管,リン酸化,タウオパチー,FTDP-17
論文名 α-シヌクレイン
著者名 山本泰司,小田陽彦,前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):542-554,2010
抄録 1988年,Maroteauxらがシヌクレインと命名して20年あまりが経過した.ヒトα-シヌクレインは1993年にクローニングにより同定されて以来,現在に至るまで多くの知見が報告されている.臨床的にみると以前からパーキンソン病(PD〈PDD〉),レビー小体型認知症(DLB),多系統萎縮症(MSA)などの疾患との関連が多く報告されてきたが,最近になってアルツハイマー病(AD)の発症にも関与している可能性が高いことがわかってきた.本稿では,現在までに報告されているα-シヌクレインに関する知見を総括的に述べる.
キーワード α-シヌクレイン,シヌクレイノパチー,認知症,レビー小体,パーキンソン病,アルツハイマー病
論文名 プログラニュリン
著者名 根建 拓,松脇貴志,朝倉 麗,西原真杉
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):555-560,2010
抄録 近年,認知症のひとつである前頭側頭葉変性症と成長因子プログラニュリンの遺伝子変異が連関することが報告され,脳神経系におけるプログラニュリン研究は大きな注目を集めている.さらに,実験動物や培養細胞を用いた研究から,脳神経系におけるプログラニュリンの生理作用,発現制御機構が急速に明らかにされつつある.本稿では,プログラニュリンに関する研究の現状と今後の課題について,筆者らが得た知見を交えながら紹介する.
キーワード プログラニュリン,前頭側頭葉変性症,筋萎縮性側索硬化症,神経変性,神経新生
論文名 TDP-43
著者名 細川雅人,新井哲明,秋山治彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):561-571,2010
抄録 TAR DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)は,前頭側頭葉変性症(FTLD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)の特徴的病理構造物であるタウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分である.TDP-43遺伝子変異の多くはALSの原因となるが,一部FTLDとの関連も認められる.TDP-43遺伝子変異と病態との関係にはいまだ不明な点が多いが,TDP-43の断片化や凝集体形成の促進などが指摘されている.TDP-43遺伝子変異を導入した細胞・動物モデルの開発が進んできており,今後これらを用いた解析による病態解明と治療法の開発が期待される.
キーワード 前頭側頭葉変性症(FTLD),筋萎縮性側索硬化症(ALS),神経細胞質内封入体(NCI),神経細胞核内封入体(NII),ミスセンス変異
論文名 アポリポタンパクE4
著者名 高橋未央,鷲塚伸介,天野直二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):572-578,2010
抄録 アポリポタンパクEの遺伝子は第19番染色体長腕に位置しており,3つの主要なアイソフォームが存在し,そのなかのひとつであるアポリポタンパクE4はアルツハイマー病の危険因子として知られている.アルツハイマー病におけるアポリポタンパクE4の位置づけを,タンパクの構造,アイソフォーム,遺伝子,プロモーター,画像所見との関連などについて記述した.また,他の認知症とアポリポタンパクE4の関連に関しても若干の記述を加えた.
キーワード アポリポタンパクE4,アルツハイマー病,遺伝子,アイソフォーム,海馬
論文名 認知症診断の脳血流SPECTの利用実態調査
著者名 小田陽彦,山本泰司,前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):581-586,2010
抄録 【目的】わが国の認知症診療における脳血流SPECTの利用実態を調査する.【対象】ソネットM3に登録されている医師のうち,所属診療科として神経内科,老人科/老人内科,脳内科,精神科,神経科に登録しており,新規の認知症患者を3人/月以上診察しており,SPECTを保有する施設に勤務している医師103人.【方法】インターネットを用いたアンケート調査.【結果】認知症新規患者数は平均5.5±5.3人/月であった.脳血流SPECTの実施件数は平均3.3±4.7件/月であった.SPECT実施件数と軽度認知障害,軽度,中等度認知症患者数とはそれぞれ正の相関を示したが,SPECT実施件数と重度認知症患者数との間には相関はみられなかった.医師のSPECT理解度とSPECT実施件数は有意な正の相関を示した.【結論】SPECT理解の普及はSPECT利用の増加につながるかもしれない.
キーワード 認知症,SPECT,アンケート調査
論文名 特異な経過をたどった器質性幻覚症の1例
著者名 種市 愈
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(5):587-591,2010
抄録 Vogt-小柳-原田氏症候群(以下,VKH症候群)に罹患し身体症状が改善したあとにうつ状態・幻聴・作話を呈した高齢女性について報告する.症例は84歳.頭痛・視力低下で発症し1か月で身体症状の改善をみたがその後気分の低下・不眠・食欲低下を訴えてうつ病の治療を受け,気分の低下・不眠は改善したが食欲の低下が続いていた.食事を摂らない理由として幻聴を訴えさらに作話を述べるようになった.経過を通して意識障害・認知障害はみられずVKH症候群の治療後1年半を経て精神症状の消退がみられたことから,VKH症候群罹患を背景とした老年発症の器質性幻覚症として特異な経過をたどった例と考えた.
キーワード 器質性幻覚症,うつ状態,幻聴,作話,VKH症候群(Vogt-小柳-原田氏症候群)
 


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