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2010 Vol.21 No.1


老年精神医学雑誌
第21巻第1号
(通巻253号)
2010年1月20日
発行


巻 頭 言 もの忘れ外来でなにができるか

 

中嶋義文

6


特 集 認知症者の尊厳は守られているか
  認知症者の尊厳は守られているか;総論
池田惠利子 19
  認知症の人は適切な治療を受けられているか;どのくらい早期発見できて治療につながっているか
大澤 誠 16
  認知症の身体合併症は適切に治療されているか;一般病棟における身体拘束の課題を含めて
熊谷 亮,井関栄三 22
  なぜ認知症者では成年後見制度の利用が少ないのか
香川美里 27
  BPSDへの対応の現状と課題
  水野 裕 36
  認知症者の生活は支えられているか;とくに独居の認知症者をめぐって
  沖田裕子 44
  認知症者への虐待には適切に対応できているか
  吉川悠貴 52
  認知症のケア提供者に対する教育の現状と課題
  諏訪さゆり 60

原著論文

 

軽度アルツハイマー病患者に対する個別回想を用いた集団療法プログラムの効果

竹田伸也,田治米佳世,西尾まり子

73

調査報告

 

精神科病院における認知症医療のあり方;石川県立高松病院における認知症入院患者の残存率と報酬面からの考察

北村 立,北村真希,澁谷良子,倉田孝一

82

基礎講座 老年精神医学研究の進め方と発表の仕方(4)
  統計学・推計学的方法;老年精神医学研究に求められる検定力分析,標本効果量および信頼区間  
 

奥村泰之,伊藤弘人

93

連 載 高齢社会の諸相
  第16回 高齢者が社会に果たす役割  
 

小川全夫

101

座談会

 

新時代の老年精神医学会の目指すところ

出席者 新井平伊,朝田 隆,繁田雅弘,武田雅俊
司 会 斎藤正彦

109

文献抄禄 軽度認知機能低下における金銭管理能力の低下;1年間の縦断的研究
北村 伸 123
前向きの住民対象研究における偶発的なアルツハイマー病の診断前後の錐体外路徴候
北村 伸 123

第25回日本老年精神医学会一般演題募集要項
 

124

学会NEWS  
  第25回日本老年精神医学会開催のご案内 137

学会入会案内 150
バックナンバーのご案内 154
編集後記 158

 
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特集

論文名 認知症者の尊厳は守られているか;総論
著者名 池田惠利子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):9-15,2010
抄録 措置制度と家父長制度が長く続いた日本においては,認知症になると家族にまずは支援が期待され,自治体には「保護されるべき者」として扱われることが多い.また,そのような状況から第一義的に家族支援が期待されていても,家族機能の低下等により認知症者が適切に保護されない虐待等にあっていても,自治体の役割の混乱から「人権の主体」として尊厳を守られるための権利擁護や危機介入支援が十分図られているとはいえない.また,施設等においても,認知症者は主張できない,手続きできないことから「声なき声」として,権利侵害を受けやすい.成年後見制度の活用が望まれる.
キーワード 人権の主体,高齢者虐待,権利擁護,成年後見,家族機能の低下
論文名 認知症の人は適切な治療を受けられているか;どのくらい早期発見できて治療につながっているか
著者名 大澤 誠
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):16-21,2010
抄録 ・認知症の人の尊厳を守るために求められる「認知症の人の在宅医療」という視点
・認知症の早期発見に果たす「かかりつけ医」の役割
・「かかりつけ医」を目指す大井戸診療所の認知症診療
・群馬県もの忘れ検診
・認知症の早期発見・早期介入をするうえでの「かかりつけ医」の課題
キーワード 認知症の人の尊厳,認知症の人の在宅医療,認知症の早期発見・早期介入,事前の意思表示
論文名 認知症の身体合併症は適切に治療されているか;一般病棟における身体拘束の課題を含めて
著者名 熊谷 亮,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):22-26,2010
抄録 認知症患者の身体合併症治療について,診断・入院・治療・退院の各段階に分け,それらを適切に行ううえでの問題点について述べた.診断までの過程や症状に対する不慣れ,入院可能病床の少なさ,身体拘束など問題点はさまざまであるが,そのいくつかにおいて入院期間の長期化に伴う空床確保のむずかしさが関与していると考えられた.自宅も含めて適切な退院先を探していくことが重要と思われる.
キーワード 認知症,身体合併症,合併症治療病棟,同意能力,身体拘束
論文名 なぜ認知症者では成年後見制度の利用が少ないのか
著者名 香川美里
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):27-35,2010
抄録 成年後見制度は認知症者の尊厳に資する制度であるが,利用が多いとはいえない.利用が伸び悩む背景には,主治医がいない場合に診断書(成年後見用)が取得しにくいことや,成年後見制度の利用の端緒となる申立てを家族に依存する仕組みであるため,制度利用の必要性を家族が感じなければ利用が困難である面が挙げられる.市区町長申立など行政の積極的な関与が必要である.また,後見人等には家族が選任されることも多いが,第三者の専門家ほか多様な選択肢があれば利用が増えるであろう.また,保佐・補助については,一定の権限付与には本人の同意が必要であるため,制度の特徴を理解しつつ,事案に応じた利用法が検討されれば,利用しやすくなる.任意後見制度の利用も伸び悩んでいるが,受任者の選択肢が広がり,また,受任者の不祥事の起きない仕組みづくり等を検討することが必要であろう.
キーワード 成年後見制度,診断書(成年後見用),保佐類型・補助類型,任意後見契約
論文名 BPSDへの対応の現状と課題
著者名 水野 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):36-43,2010
抄録 BPSDへの対策の必要性が強調されている.しかし,妄想性障害,体感幻覚などの精神疾患を認知症と誤解していたり,薬剤の副作用を認知症の増悪と思っている例,さらに施設での管理,規則の厳しさに反応しての興奮などをBPSDとしてとらえられていることすらある.真のBPSDは,認知症病棟であっても対応,治療が困難であり,入院の長期化を招いているが,当院で3か月以内での退院率がある一定程度保てるのは,真のBPSDがそれほど多くないことにほかならない.
キーワード BPSD,精神疾患との鑑別,副作用,施設での行動制限,認知症疾患治療病棟
論文名 認知症者の生活は支えられているか;とくに独居の認知症者をめぐって
著者名 沖田裕子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):44-51,2010
抄録 地域での支援困難ケースは,独居の高齢者が多い.独居の認知症者の尊厳が守られにくいパターンを分析すると,@介護保険等のサービスが必要と考えられるのに,サービス利用が困難なケース,A認知症の症状が疑われるのに医療を受けられていないケース,B認知症の周辺症状や火災の危惧等から地域住民に入所を迫られるケース,C同居していない家族や親戚からの虐待が疑われるケース,D第三者からの虐待が疑われるケースである.これらのパターンの具体的な状況と,支援策を考える.
キーワード 独居,認知症者,高齢者虐待,介護保険,認知症連携強化事業
論文名 認知症者への虐待には適切に対応できているか
著者名 吉川悠貴
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):52-59,2010
抄録 認知症者が虐待の被害に遭いやすい実態を示すとともに,認知症者が被害者である場合を中心に,虐待発見のための対応や発見後の介入・支援について検討した.しかし,最も重視されるべきは虐待の「防止」という意味での対応の適切さであり,それは換言すれば認知症者へのケア,あるいは認知症者をケアする人への支援や教育の問題である.
キーワード 高齢者虐待,高齢者虐待防止・養護者支援法,認知症ケア,防止,発見
論文名 認知症のケア提供者に対する教育の現状と課題
著者名 諏訪さゆり
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(1):60-70,2010
抄録 認知症ケアにおいてはケア提供者を対象としたさまざまな研修が実施されている.しかし,認知症ケアの研修ではいくつかの課題が残されているために認知症ケアの速やかな質向上が阻まれ,認知症者の尊厳が守られない状況が起こっている.それらの課題には認知症の中核症状と認知症者の言動との関係性についての教育が不十分である,認知症ケアでは意味を深く理解しないまま安易に使用されている用語が多い,認知症ケアの目標が不明確であり,具体的ケア方法を決定し採用する基準が混乱しているなどが挙げられる.本稿では認知症ケアの研修における課題とその解決策について論じた.
キーワード 尊厳,倫理,研修,パーソン論,価値
 


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