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2009 Vol.20 No.9


老年精神医学雑誌
第20巻第9号
(通巻249号)
2009年9月20日
発行



一般:2,057円(本体1905円+税)
会員:1,646円(本体1524円+税)

(いずれも税込)


購入数



巻 頭 言 急性期医療での精神科置き去りと療養病床大削減計画

 

一瀬邦弘

934


特 集 老年精神医学とオミックス医療
  ゲノミックスと精神神経疾患
石黒浩毅,有波忠雄 939
  プロテオミクスと精神神経疾患
川又 純 946
  メタボロミクスと精神神経疾患
森田宏俊 953
  ファルマコゲノミックスと精神神経疾患
武田雅俊,江副智子 959
  アルツハイマー病のゲノミックス
  柴田展人,新井平伊 968
  パーキンソン病のゲノミックス
  戸田達史 973
  脳血管障害のゲノミックス
  高橋哲也,松本昌泰 980
  抗うつ薬,抗精神病薬のファルマコゲノミックス
  古郡規雄 989

資料 ドネペジル塩酸塩によるアルツハイマー型認知症患者とその家族の包括的健康関連QOL指標の変化に関する研究
 

八森 淳,河野禎之,本間 昭,朝田 隆,池田 学,安田朝子,
稲葉百合子,木之下徹,内海久美子,奥村 歩,川嶋乃里子,
川畑信也,繁田雅弘,繁信和恵,高橋 智,田北昌史,玉井 顯,
長田 乾,橋本 衛,平井茂夫,藤沢嘉勝,水上勝義,山田達夫,
小阪憲司

997

資料 認知症医療によるアルツハイマー型認知症の本人および介護者の包括的健康関連QOL指標の変化
 

八森 淳,安田朝子,本間 昭,朝田 隆,池田 学,河野禎之,
稲葉百合子,木之下 徹,内海久美子,奥村 歩,川嶋乃里子,
川畑信也,繁田雅弘,繁信和恵,高橋 智,田北昌史,玉井 顯,
長田 乾,橋本 衛,平井茂夫,藤沢嘉勝,水上勝義,山田達夫,
小阪憲司

1009

連載 高齢社会の諸相
  第12回 サクセスフルエイジングとはなにか  
 

井形昭弘

1023

文献抄禄 健常高齢者の認知機能を対象とした介入の直後および遅延効果;文献レビューと将来の方向
本間 昭 1030
プライマリ・ケアと認知症;1.診断,スクリーニングと開示
  本間 昭 1030

書 評 『施設スタッフと家族のための認知症の理解と家族支援方法』
加藤伸司,矢吹知之 編著
 

本間 昭

1031

学会NEWS 第24回日本老年精神医学会を終えて  
 

古茶大樹

1033

編集後記     1054

 
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特集

論文名 

ゲノミックスと精神神経疾患
著者名

石黒浩毅,有波忠雄

雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):939-945,2009
抄録 ヒトゲノムの完全解読が完了し,マイクロアレイにより網羅的なゲノムマーカーの解析が可能になったことから,精神あるいはその疾病解明にもゲノミックスが貢献する期待は高い.しかし,精神疾患の多くは遺伝率が高い一方で,環境要因などゲノム情報外の影響が大きく複雑で,現在まで発症脆弱性にかかわるゲノム情報で確実なものは少ない.疾患にかかわるゲノムはcommonあるいはrare variantいずれであるのか.老年期精神障害では,脳のagingや心理ストレスに影響を受ける分子もリスク遺伝子として同定される可能性がある.
キーワード  CDCV,CDRV,連鎖解析,アレイ,GWAS,CNV

論文名 

プロテオミクスと精神神経疾患
著者名 

川又 純

雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):946-952,2009
抄録 質量分析の進歩により,患者の組織を用いた疾患プロテオミクスが可能となった.精神神経疾患でも多くの研究が行われているが,網羅的なアプローチにおいては疾患特異性の高いバイオマーカーの発見などの結果はまだ得られていない.一方,病理学的所見や遺伝学的な知見をふまえた研究から神経変性の新たな主要タンパク質であるTDP-43が同定され,タウオパチー,シヌクレイノパチーに続き,新たにTDP-43プロテイノパチーが提唱されるなど,神経変性疾患の分類を塗り替える発見がなされている.
キーワード  proteomics,Alzheimer disease(AD),Parkinson disease(PD),amyotrophic lateral sclerosis(ALS),schizophrenia,TDP-43

論文名 

メタボロミクスと精神神経疾患
著者名 森田宏俊
雑誌名
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):953-958,2009
抄録 メタボロミクスは遺伝的要因のみでなく環境的要因も含めた表現系を解析できるオミックス技術として着目されているが,最も後発のオミックス技術であり,精神神経疾患へのメタボロミクス的アプローチはまだ端緒についたところである.一方で,断片的ながらも患者を用いた研究成果も上がりつつある.本稿ではメタボロミクスの概要を解説するとともに各精神神経疾患における取組みについて紹介する.
キーワード  メタボロミクス,核磁気共鳴分光法,質量分析法,リピドミクス

論文名 

ファルマコゲノミックスと精神神経疾患
著者名  武田雅俊,江副智子
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):959-967,2009
抄録  中枢神経系には25,000のヒト遺伝子の80%以上が発現しており,ゲノム医学の成果は精神神経疾患に応用され始めている.ゲノム全体では0.1〜2%の個人差があり,このような個人の遺伝情報は個人に最適な薬物療法に応用されるようになりつつある.ファルマコゲノミックスに関与する遺伝子群は,薬物の吸収,分布,代謝に関与して薬物の血中濃度や半減期を調節している薬物動態(pahramocokinetics)に関係するものと,薬物のターゲットである脳内受容体の発現や機能および細胞内シグナル系に影響を与える薬物力学(pahrmacodynamics)に影響する遺伝子群とに大別することができる.多くの薬物が肝臓のチトクロームP450(CYP)において代謝されており,CYP遺伝子多型について精神神経科薬剤に関するファルマコキネティクスの知見が蓄積されている.ファルマコダイナミクスについての知見は十分ではないが,抗うつ薬とアルツハイマー病治療薬についてのファルマコゲノミックスについて概説する.
キーワード  ファルマコゲノミックス,ファルマコキネティクス,ファルマコダイナミクス,認知症,抗うつ薬

論文名 

アルツハイマー病のゲノミックス
著者名  柴田展人,新井平伊
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 20(9):968-972,2009
抄録  アルツハイマー病はAPP,PS-1,PS-2およびApoEなどのゲノムの知見から急速に病態解明が進んでいる.連鎖解析にはDNAチップを用いて網羅的に原因遺伝子を検索し,大量にゲノムを判読できるようになってきている.またリスク遺伝子を見いだすために染色体ワイド,ゲノムワイドアプローチが用いられ,新規の候補遺伝子も同定されつつある.また主病態である細胞外でのアミロイド沈着と細胞内での異常リン酸化されたタウを含む神経原線維変化に関連した臨床に直結したバイオマーカーも確立しつつある.
キーワード  アルツハイマー病,SNP,バイオマーカー,アミロイド,タウ,薬理遺伝

論文名 

パーキンソン病のゲノミックス
著者名  戸田達史
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):973-979,2009
抄録  メンデル遺伝性パーキンソン病(PD)家系から6つのメンデル遺伝性PD原因遺伝子が明らかにされ,ミトコンドリア障害,酸化ストレス障害の病態への関与に加え,ユビキチン・プロテアソーム系の機能低下,つまりタンパク分解異常からドパミン細胞死に至る経路の重要性が示された.大多数を占める孤発性PDは多因子疾患であり,筆者らはa-シヌクレインが孤発性PDの確実な疾患感受性遺伝子であることを明らかにし,また50万SNPチップを用いた全ゲノム関連解析(GWAS)にて新規の遺伝子を同定した.Rare variantとしてゴーシェ病遺伝子が明らかにされた.
キーワード  多因子疾患,α-シヌクレイン,SNPチップ,全ゲノム関連解析(GWAS),ゴーシェ病

論文名 

脳血管障害のゲノミックス
著者名  高橋哲也,松本昌泰
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):980-988,2009
抄録  脳血管障害は遺伝学的には,家族歴から遺伝的要因が明らかな単一遺伝子疾患と,複数の遺伝子の表現型として発症する多遺伝子疾患とに大別できる.単一遺伝子疾患としての脳血管障害は比較的若年に発症し,cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathyやautosomal dominant retinal vasculopathy with cerebral leukodystrophy,Fabry病,弾力線維性仮性黄色腫などがこれに相当する.これらの疾患では眼など他の臓器の血管障害を伴うことがある.一方,多遺伝子疾患としての脳血管障害は,一塩基多型などの遺伝子多型が関与するもので,ゲノムワイドな関連遺伝子検索によりphosphodiesterase 4D,protein kinase C eta,angitotensin receptor like-1,arachidonate 5-lipoxygenase-activating proteinなどがこれまでに疾患関連遺伝子として報告されている.これらの知見は脳血管障害の病態解明の一助となるものであるが,一部の遺伝子多型については今後の確認が必要と考えられているものもある.
キーワード  脳血管障害,単一遺伝子疾患,多遺伝子疾患,遺伝子多型,一塩基多型

論文名 

抗うつ薬,抗精神病薬のファルマコゲノミックス
著者名  古郡規雄
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌,20(9):989-994,2009
抄録  近年,神経伝達物質受容体遺伝子多型に注目が集まり,セロトニンやドパミン受容体遺伝子型と薬物反応性との相関をみる研究が行われている.SSRIの治療標的であるセロトニントランスポーター遺伝子関連多型部位が最も頻繁に研究され,一部反証もあるが抗うつ作用との関連性がありそうである.Dopamine receptor D2において,-141C Ins/Del多型のなかで-141C Ins alleleが存在するほうが,同様にTaq1 A多型のなかでA1 alleleを持つ群で治療反応性は良好であるとの報告が多い.今後,薬理遺伝学的手法を用いた研究が積極的に推し進められることにより,精神科領域におけるテーラーメイド医療の導入と実践が容易となることを期待したい.
キーワード  pharmacogenetics,personalized medicine,DRD2,5-HTT



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