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特集
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論文名
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アルツハイマー型認知症の経過・予後 |
著者名 |
植木 彰
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雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):605-610,2009 |
抄録 |
アルツハイマー病(AD)の自然経過は直線状ではなく,初期と末期の経過が緩徐で,中期の経過が早いシグモイド曲線を描く.症状の進行速度は個人差がきわめて大きく,また同一個人でも時期によって大きな差がある.ADは明らかに平均余命を短縮し,死亡の予測因子になっている.この理由は心身の衰えによる虚弱性が最大の理由である.残念ながら,進行過程を促進する因子に関してはまだ確実なものはない.ADの自然経過を理解することは患者家族への予後説明や将来の介護への予測を行ううえで重要である. |
キーワード |
アルツハイマー病,自然経過,罹病期間,死亡率,増悪因子 |
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論文名
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血管性認知症の経過・予後 |
著者名 |
長尾毅彦,横地正之,田久保秀樹
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雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):611-617,2009 |
抄録 |
血管性認知症(VaD)にはさまざまな病態が含まれており,その背景因子も多様である.典型的には脳卒中発作を起こすたびに段階的に悪化するが,慢性の脳循環不全を基盤に緩徐に進行するタイプも存在する.その進行には,脳卒中の再発が大きく関与する.背景には高血圧をはじめとする動脈硬化危険因子の存在がきわめて大きく,その徹底した管理が個々の症例の予後を決定している.内頸動脈の狭窄・閉塞例では軽度の認知障害が合併していることが多く,血行再建術によって,認知障害が改善する場合と,逆に症状が悪化する場合があることに注意が必要である.VaDに対しても,各種抗認知症薬の有効性が多数報告されているが,VaDの症状悪化には基礎疾患の管理不良が引き金となっており,各担当医が内科的な治療を徹底させることが最も有効な予防方法であるといえる. |
キーワード |
post-stroke dementia,strategic infarct dementia,lacunar stroke,vascular cognitive impairment,progressive subcortical vascular dementia |
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論文名
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レビー小体型認知症の経過・予後 |
著者名 |
内海雄思,村山憲男,井関栄三 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):618-622,2009 |
抄録 |
レビー小体型認知症は認知機能の動揺や幻視,パーキンソニズムなどを特徴とする認知症で,老年期の変性性認知症ではアルツハイマー型認知症に次いで頻度が高い.この疾患の経過や予後は亜型によって異なるが,全体としてはアルツハイマー型認知症よりも不良である場合が多い.また,レビー小体型認知症は治療や介護のあり方で経過や予後が左右されやすく,的確に診断し,症状の特徴に合わせた治療や介護を行う必要性が高い. |
キーワード |
レビー小体型認知症,認知機能の動揺,幻視,パーキンソニズム,経過,予後 |
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論文名
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前頭側頭葉変性症の経過・予後 |
著者名 |
清水秀明,小森憲治郎,樫林哲雄,鉾石和彦 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):623-629,2009 |
抄録 |
前頭側頭型認知症(FTD)と意味性認知症(SD)は,上位概念である前頭側頭葉変性症(FTLD)に含まれ,前者では性格変化や行動異常が,後者では失語症状等が初期には目立ち,経過とともに自発性低下が進行する.最近では,多数例での長期経過や予後について検討した報告がみられるが,依然として少ない.今後,進行性非流暢性失語(PA)も含めて臨床亜型に対応した分類に基づく症例の蓄積と詳細な経過観察を行うことが必要と思われる. |
キーワード |
前頭側頭葉変性症,前頭側頭型認知症,意味性認知症,経過,予後 |
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論文名
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薬物療法と長期経過・予後 |
著者名 |
中村 祐 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌, 20(6):630-639,2009 |
抄録 |
ドネペジルをはじめとしてガランタミン,リバスチグミンなどアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の長期的効果のエビデンスは得られており,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は長期にアルツハイマー型認知症の進行を抑制すると考えられる.また,最近では,高度アルツハイマー型認知症においても進行抑制効果が証明されている.しかし,どの程度進行抑制するかについては,プラセボが長期投与できないことから,正確には知り得ない.また,現在,根本治療薬の治験が進められているが,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチン(日本未上市)の併用を許可していることから,この問題に関しては今後解決される見通しがないが,この状況は世界でアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンの長期投与の効果が認められている証左でもある. |
キーワード |
ドネペジル,アルツハイマー型認知症,進行抑制,認知機能,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 |
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論文名
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心理社会的介入と長期経過・予後── 1985年以降の欧米文献を中心として ── |
著者名 |
野村豊子 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):640-645,2009 |
抄録 |
認知症高齢者への心理社会的介入に関し,1985年以降の欧米と中心としたRCTデザインを用いた先行文献のなかで,長期経過に言及しているものは皆無であった.しかしながら,それらの介入に時間の要素を豊富に含み,実施者のスキルの継続性と各種の社会サービスの活用等が介入の要素として長期経過に影響することが推測された.また,家族へのサポートグループ,教育的グループは,とくに伴侶に対し,長期的な影響を有することが示された. |
キーワード |
心理社会的アプローチ,RCTデザイン,回想法とライフレヴュー,精神療法,家族介護者へのアプローチ |
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論文名
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認知症の長期経過とケア |
著者名 |
萩野悦子 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):646-650,2009 |
抄録 |
認知症の人は,セルフケアの力が低下したり環境によってその人のもつ力を発揮できない状態であることが多い.したがってケアをしている側の視点やケアの方法によって,認知症の人のQOLに大きく影響を及ぼすことになる.本稿では,認知症の経過に伴い現れてくる摂食・嚥下障害や生活リズム障害に対するケア,認知症をもつ本人の意思の確認に焦点をあてて述べる. |
キーワード |
認知症,QOL,摂食・嚥下障害,生活リズム障害,意思 |
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論文名
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合併疾患の管理と経過・予後 |
著者名 |
石渡明子 |
雑誌名
巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(6):651-659,2009 |
抄録 |
- 認知症は後期になると,摂食・栄養障害,歩行障害,排泄障害に基づくさまざまな合併疾患を呈し予後に影響を与えるため,予防と早期の対処が大切である.
- 摂食障害による低栄養は,廃用症候群などを合併すると寝たきり状態となり生命予後はきわめて不良となる.
- 嚥下障害は誤嚥性肺炎の原因となり,反復唾液嚥下テストなどで早期に評価することが重要である.
- 歩行障害による転倒がきっかけでベッド上生活となると,生存期間の短縮や死亡と関係する.服用中の薬剤が嚥下障害,転倒,排泄障害の原因となることもあるため注意を要する.
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キーワード |
摂食・栄養障害,嚥下障害,歩行障害,排尿障害,地域包括支援ネットワーク |
キーワード |
認知症,QOL,摂食・嚥下障害,生活リズム障害,意思 |