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2009 Vol.20 No.3 老年精神医学雑誌 第20巻第3号 (通巻241号) 2009年3月20日 発行 |
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特集 |
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論文名 |
軽度認知障害(MCI)の概念 |
著者名 |
朝田 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):251-257,2009 |
抄録 | 軽度認知障害(MCI)が注目されている.その基盤は,「生理的もの忘れとADの最初期のもの忘れとの境目はどこにあるのだろうか」という問いにある.本稿では,Kralの提唱した「良性,悪性のもの忘れ」から今日に至るまでの軽度認知障害の概念を総説した.まずMCI概念が誕生した背景とその変遷を紹介し,最新の分類法を示した.そして「どのMCIがどのような認知症になるのか」という問いに対する最近の結果を示した.次にMCI類似の概念として重要と思われるage-associated memory impairment(AAMI),ageing-associated cognitive decline(AACD),cognitive impairment no dementia(CIND),CDR 0.5,ICD-10の軽度認知障害(mild cognitive disorder),DSM-?Wの軽度の神経認知障害(mild neurocognitive disorder ; MND)を紹介した.さらに前駆期や早期を視野にいれた新版NINCDS-ADRDAについても言及した. |
キーワード | mild cognitive impairment(MCI),age-associated memory impairment(AAMI),ageing-associated cognitive decline(AACD),cognitive impairment no dementia(CIND),CDR 0.5,mild cognitive disorder,mild neurocognitive disorder(MND) |
論文名 |
軽度認知障害の予後に関する疫学調査結果をどう考えるか |
著者名 |
石川智久,谷向 知 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):258-264,2009 |
抄録 | 軽度認知障害(MCI)の高齢者の予後に関する報告をみると,調査条件の違いにより数値に幅があるものの,年間4〜7%程度のMCI高齢者が認知症/アルツハイマー型認知症(DAT)へ移行すると考えられる.その一方,MCIから多種多様の認知症へ移行する可能性があるほか,MCIの状態に長く留まる群や,正常にリカバリーする群もある.このことをふまえて,MCIの告知や告知後の支援体制のあり方などについて,柔軟に対応することが求められる. |
キーワード | 軽度認知障害(MCI),疫学調査,予後,移行率 |
論文名 |
手段的ADLの水準低下と認知症への移行 |
著者名 | 大内義隆,目黒謙一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):265-270,2009 |
抄録 | 認知症とは,認知障害があるだけでなく,生活に支障をきたす状態を示す.したがって,社会生活活動を注意深く観察することはきわめて重要である.何とか社会生活を営んでいるMCI高齢者においても,IADL(複雑な家事動作など)については,問題を抱えるケースも少なくない.地域在住のMCI高齢者における縦断分析の結果,IADL水準(布団の管理・掃除)の低下は,全般的認知機能とは独立した認知症移行への予測因子となる結果が示唆された. |
キーワード | MCI,手段的日常生活動作(IADL),認知症への移行,遂行機能,うつ状態 |
論文名 |
軽度認知障害の画像診断 |
著者名 | 石井賢二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):271-279,2009 |
抄録 | アルツハイマー病の根本治療薬の開発が進むなかで,軽度認知障害(MCI)の画像診断には,早期診断のための指標と,病態進展を客観的に表す指標としての役割が求められる.本稿では現在北米とわが国で進行している,アルツハイマー病診断体系化のための多施設共同研究(ADNI)で採用されているMRI,FDG-PET,およびアミロイド(PiB)PETの概要を紹介し,MCIの病態診断におけるそれぞれの画像の役割について概説する. |
キーワード | MCI,Alzheimer,s disease,MRI,FDG-PET,amyloid imaging |
論文名 |
軽度認知障害の神経病理 |
著者名 | 高尾昌樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌, 20(3):280-286,2009 |
抄録 | 1.軽度認知障害(とくにamnestic-MCI)における神経病理所見に関して概説した. 2.a-MCIの背景にある病理変化は,アルツハイマー病初期の変化だけでなく,レビー小体病,神経原線維変化有意型認知症や嗜銀顆粒性認知症などのタウオパチー,脳血管疾患や海馬硬化なども原因となっている. 3.a-MCIの全例が認知症に進行するわけではなく,多彩な背景疾患が関与していることを理解することが,臨床的観点からも重要である. |
キーワード | 軽度認知障害,MCI,嗜銀顆粒性認知症,神経原線維変化,海馬硬化 |
論文名 |
軽度認知障害への対応・訓練 ── 説明と病名告知を含めて ── |
著者名 | 三村 將,古田伸夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):287-293,2009 |
抄録 | 軽度認知障害(MCI)と診断した場合,患者・家族にいかなる説明を行い,対応・治療の指針を考えるかという臨床的問題について概説した.正常範囲内と病的機能低下とのいわば「グレーゾーン」に位置するMCIの患者はその相当数が認知症へ進展していく.本稿ではまず,MCIと診断した場合の説明と病名告知に関する指針について述べた.適切な説明と告知はMCIの症例に対し,早期治療・早期介入を行ううえで重要であるとともに,一方で過剰な医療に陥らない意義もあると考えられる.次に,薬物療法については,いかなる段階で塩酸ドネペジルの使用を開始するかが最大の争点になる.塩酸ドネペジルのMCIに対する効果はあくまでも限定的であり,その使用に関しては患者・家族の希望を勘案しながらケースバイケースで考える.さらに,非薬物療法については,一般的要因や生活習慣についての指導とともに,症例によって個人・集団訓練の方向性を模索する.MCIの記憶障害の軽減をターゲットとした最近の認知訓練の報告について概説した.最後に,近年問題になることの多いMCI患者の運転適性を考えるうえでの指針を述べた.余暇や活動性向上の見地からも,MCIのドライバーについては,ただちに運転を控えるよう助言するのではないが,注意深い配慮が必要である. |
キーワード | 塩酸ドネペジル,告知,加齢,アルツハイマー病,認知リハビリテーション,運転 |
論文名 |
軽度認知障害(MCI)発症前後の認知症予防 |
著者名 | 布村明彦,玉置寿男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):294-305,2009 |
抄録 | 近年,アルツハイマー病や血管性認知症の危険因子の解明が進み,修正可能な危険因子が見いだされてきた.大規模前向きコホート研究のシステマティック・レビューにより,中年期の糖尿病,高血圧,脂質異常症,肥満などの予防が老年期の認知症の予防に役立つことが示唆されている.軽度認知障害(MCI)症例を対象にしたランダム化比較試験において,有用な薬理学的介入は見いだされていないが,最近,運動プログラムを用いた介入の有効性が報告されている. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー病,MCI,危険因子,予防,神経ホルミシス |
論文名 |
認知症予防事業の対象 ── 地域支援事業の特定高齢者との関連について ── |
著者名 | 矢冨直美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(3):306-312,2009 |
抄録 | 特定高齢者をスクリーニングするチェックリストには,認知症(あるいは軽度認知障害)に関連する3項目が設けられているが,特定高齢者はそれらの項目と無関係に決められている.しかも,認知症関連項目も軽度認知障害のスクリーニングには役に立たない可能性がある.認知症予防,あるいは認知機能の改善を図る事業を推進するのなら,軽度認知障害の人たちをスクリーニングできる妥当性のあるチェックリストの用意が必要であろう. |
キーワード | 地域支援事業,特定高齢者,認知症予防,基本チェックリスト |