◆「老年精神医学雑誌」のご案内◆

2008 Vol.19 No.10



老年精神医学雑誌
第19巻第10号
(通巻235号)
2008年10月20日
発行
巻 頭 言 新しいことを習得する能力の減弱

 

稲田俊也

1056


特 集 認知症のステージと臨床診療の流れ
  認知症医療;発症から看取りまで―特集のイントロダクションとして
斎藤正彦 1059
  認知症の早期診断
朝田 隆 1062
  早期認知症患者の外来診療
―地域医療の視点から,もの忘れ外来の機能分担を見据えて
藤本直規,奥村典子 1068
  抗認知症薬の現状
本間 昭 1082
  認知症に関する介護保険サービスの現状と課題
―2006年改正後の課題
  今井幸充,黄 才栄 1090
  認知症中期以降の外来マネジメント
  一宮洋介 1099
  認知症終末期のケアの現状と課題
西村敏樹 1105

原著論文 晩発性のアルツハイマー型認知症患者における頭痛に対する釣藤散
の有用性
  久永明人ほか 1113

基礎講座 認知症への非薬物療法
  第18回 園芸療法  
 

杉原式穂

1119

連  載 高齢社会の諸相
第1回 老年観の変遷について
長谷川和夫 1125

文献抄禄 田中稔久,武田雅俊
  1132

書評

「メランコリー;人生後半期の妄想性障害」

  林 拓二 1133

学会NEWS 第24回日本老年精神医学会開催のご案内
平成21年度日本老年精神医学会認定専門医試験実施のお知らせ
 
  1135

学会入会案内 1148

バックナンバーのご案内 1153

編集後記     1156


特集

論文名 

認知症医療;発症から看取りまで―― 特集のイントロダクションとして ――
著者名

斎藤正彦

雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1059-1061,2008
抄録 
キーワード 

論文名 

認知症の早期診断

著者名 

朝田 隆

雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1062-1067,2008
抄録  認知症の早期診断・治療の重要性は今後さらに強調されると思われる.その理由に3点がある.@既存の対症療法でも多少とも進行を止められる,A理論的にはアミロイドワクチンなど新規の治療法は早期ほど有効と考えられる,B早期なら成年後見制度の利用も含めた将来の人生設計が可能である.そこで早期診断の基本となる診察法について述べ,次に重要な軽度認知障害(MCI)の概念と分類法を紹介した.そのうえで,MCI診断とそれに用いる神経心理テストについてまとめ,さらに補助的診断法からサロゲートマーカーとしての役割も期待される画像診断(MRI,SPECT)とバイオマーカーについて述べた.最後に当事者と家族に対する実際の説明にふれた.
キーワード  mild cognitive impairment(MCI)dementiearly diagnosis Alzheimer's disease examination

論文名 

早期認知症患者の外来診療―― 地域医療の視点から,もの忘れ外来の機能分担を見据えて――
著者名  藤本直規,奥村典子
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1068-1081,2008
抄録  厚生労働省による「かかりつけ医認知症対応力向上研修」の実施に伴い,認知症早期発見におけるかかりつけ医の役割は格段に深まりつつある.今後は,地域における発症早期の認知症の診断精度の向上のために,認知症の専門医同士や専門医と脳画像診断医との間の症例検討などが必要である.また,MCIや軽度認知症患者への心理教育や自助グループとして位置づけられた認知症専用デイサービスなど,診断後の受け皿の整備においても医療の役割は重要である.
キーワード  認知症早期診断,脳画像検査,専門医間の連携,心理教育,自助グループ

論文名 

抗認知症薬の現状
著者名  本間 昭
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1082-1089,2008
抄録  抗認知症薬,つまり現時点ではアルツハイマー型認知症(AD)治療薬になるが,最近わが国で高度のADの適応が追加になった塩酸ドネペジルを中心に有効性ならびに副作用について概説した.現在使われているAD治療薬は症状の進行抑制という対症療法であるが,ほぼすべてのRCTにおいて一定した整合性のある結果が示されている.同疾患の前駆状態とも考えられるMCIについては有効性が現時点では示されていないが,臨床試験デザインに関する課題を指摘した.
キーワード  抗認知症薬,アルツハイマー型認知症,薬物療法,アセチルコリン分解酵素阻害薬

論文名 

認知症に関する介護保険サービスの現状と課題
―― 2006年改正後の課題 ――
著者名  今井幸充,黄 才栄
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1090-1098,2008
抄録  介護保険制度以前の老人福祉サービスは,市町村がサービス給付を決める「措置制度」で,老人福祉と医療が分立し,総合サービスが受けらない制度で,いわゆる社会的入院のような非効率の医療サービスが社会問題となった.介護保険制度創設後は,介護の社会化が現実となり,また2006年の改正では,介護予防と地域ケアあるいは居宅ケアをキーワードに介護のさらなる社会化を目指したのである.2008年7月から韓国でも療養保険制度が始まり,わが国の介護保険制度が国際的にも注目されている.そして,介護保険施行後10年を迎えるにあたっては,医療サービスの充実は欠かせないが,認知症者も病める個人であると同時に一人の生活者でもあり,彼らの社会参加や社会活動を支える支援体制と人材育成,事業所や施設等のサービス強化が緊急に求められる課題と考える.
キーワード  介護保険制度,高齢者介護,認知症,2015年の高齢者介護,医療介護連携

論文名 

認知症中期以降の外来マネジメント
著者名  一宮洋介
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(10):1099-1104,2008
抄録  認知症は慢性進行性の疾患であり,病期によって必要な医療や介護の内容が異なる.ここでは認知症中期以降の外来マネジメントについて,専門医療機関の立場から,中核症状に対する薬物療法,BPSDに対する治療,身体合併症治療について述べる.
キーワード  認知症,BPSD,身体合併症,高齢者医療センター

論文名 

認知症終末期のケアの現状と課題
著者名  西村敏樹
雑誌名 
巻/号/頁/年 
老年精神医学雑誌, 19(9):1105-1110,2008
抄録  認知症終末期のケアにおいて,1人ひとりの患者にとっての,残された時間のQOLをできうるかぎり向上・保持することを念頭に,最善の治療やケアを可能なかぎり提供することが使命である.治療方針の意思決定に対応する力を欠いた状態であることの多い認知症終末期患者にとって,臨床的・倫理的・法的に妥当な意思決定がなされるためには,どのような原則や手順が必要となるのかを中心にその現状と課題について述べた.
キーワード  意思決定,尊厳死,医師の役割,インフォームド・コンセント,医療・ケアチームの合意形成

 

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