「老年社会科学」 Vol.28-1 詳細一覧  
   

原著論文

論文名

要介護のひとり暮らしの女性高齢者におけるルサンチマン体験とその形成過程
著者名

松田ひとみ

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):3-11,2006
抄録

 本研究は介護が必要な女性高齢者16人を対象として,現在のひとり暮らしの継続に関与する過去からの苦悩体験を分析し,ルサンチマンの形成過程を明らかにすることを目的とした.グラウンデッド・セオリー法の継続比較分析法により探求した.その結果,3個のカテゴリーとして「入院・入所を勧める家族」「ルサンチマンの経験と学び」および「入院・入所の回避」が見いだされた.また,ルサンチマンの形成過程は,ルサンチマン誘導期,ルサンチマン醸成期とルサンチマン成果期の3期に区分された.
 「入院・入所を勧める家族」が過去の苦悩体験を誘導し,現在の子どもとの関係や入院・入所経験がルサンチマンを増大させていた.また,「入院・入所の回避」の文脈は,女性高齢者がひとり暮らしの継続を決意する過程としてとらえることができる.

 

論文名

都市高齢者のネットワークタイプによる友人との交流媒体としての携帯電話の利用状況
著者名

澤岡詩野,福尾健司,浜田知久馬

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):12-20,2006
抄録  高齢者のネットワークタイプをソーシャルサポートの提供者により分類し,友人ネットワークの構成員との交流媒体としての携帯電話の利用状況に及ぼす影響を検討した.調査は,2004年9月,東京都世田谷区に住む65歳以上の自立高齢者902人を対象に,郵便回収法によりアンケート調査を行った.回収率45.0%で,分析対象データは308人であった.結果,4つの重要な知見が得られた.(1)携帯電話の所持状況に,ネットワークタイプの影響は認められなかった.(2)友人ネットワークとして,親しくつきあっている相手を5人まで回答するよう求めた結果,友人ネットワークの規模に携帯電話の所持状況の影響は認められなかった.(3)友人ネットワークの規模および地理的近接性に,ネットワークタイプの影響が認められた.(4)友人ネットワークの構成員との交流媒体としての移動電話の利用状況に,ネットワークタイプの影響が認められた.

 

論文名

子どもからのサポートと遺産相続;夫と死別した女性高齢者の場合
著者名

直井道子,小林江里香,Liang Jersey

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):21-28,2006
抄録  夫と死別した高齢女性が子どもから受領するサポートは,子が夫の不動産を相続したかどうかで異なるのかを検討した.分析対象者は60歳以上で配偶者と死別した,複数の子のいる高齢女性425人である(調査実施1999年).第1にサポート受領・期待得点を被説明変数とし,子どもからのサポートと関連があるとされる諸要因を説明変数とする重回帰分析を行った.他の要因を統制すると,「子どもの相続の有無」はサポート受領と有意な関連がなく,子の同居や近居がもっとも寡婦の受領サポートを高めていた.第2に相続したと同一の子〈夫婦〉からサポートを受領している比率はサポートの種類により異なるが全体の4分の1程度で,まったく遺産を相続しなかった子からも40%程度はサポートを受領していた.したがって,「交換モデル」が適用される例は寡婦のうちの少数であるといえる.

 

論壇

論文名

看護と介護の連携
著者名

井上千鶴子

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):29-34,2006
抄録  本稿では,介護の実践者であり,また介護の教育にかかわる立場から「看護と介護の連携」をテーマに論及した.
 だれもが自立して自分らしく生きていくためには,生活をトータルで支える生活支援が求められ,その中核としての看護と介護の連携の重要性と必要性を述べ,さらに,連携のための条件を示し,阻害している問題を,看護職・介護職双方の意見から導き出した.そのうえで,(1)意識の問題 (2)教育内容,(3)マンパーの問題 (4)システムのあり方の4項目に整理をし,この4点に対して問題の内容と,解決へ向けての若干の提言を行った.とくに連携を不可欠とする医療依存度の高い在宅療養者の増大とそれに伴う介護負担増を背景に浮上してきた「介護職が行う医行為」について,内蔵している問題点を明らかにして,看護・介護双方の専門職としてのとらえ方について,議論の必要性を述べた.

 

論文名

高齢者の「End-of-life Care」
著者名

堀内ふき

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):35-40,2006
抄録  高齢者ケアの本質は,「高齢者が,年齢によって,あるいは特定の疾患の有無にかかわらず,死が近い状態にあるとき,その人が最期までその人らしく生き,自分の人生をよかったと思って最期を迎えてもらえるようなケア,そして,残された人が,高齢者の最期を受け入れてその後の人生を前向きに生きていけるようなケア」にあると考え,その視点から,End-of-life Careを終末期ケアと同義語としてとらえて論じた.具体的には,高齢者はどこで最期を過ごしたいのか,どのような亡くなり方をしたいと考えているのかを考えるとともに,在宅・施設・病院における看取りの実際,本人の意思が尊重される看取りのあり方,そして,残される人への配慮について考えてみた. 

 

論文名

認知症ケアに対する専門資格制度
著者名

今井幸充

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):41-49,2006
抄録  2005年5月15日に第1回認知症ケア専門士認定試験が行われ, 同年10月2日に2,445人の合格発表があり,最終的に2,442人が認知症ケア専門士に登録した. この認知症ケア専門士制度は日本認知症ケア学会が主体に行っている事業で,同学会が認知症ケア専門士を認定する認知症ケアの専門資格制度である. 本稿では,日本認知症ケア学会が認定している認知症ケア専門士制度と都道府県・指定都市が実施主体として行っている認知症介護実践研修の概要を述べ, 認知症ケア専門資格制度について論じる.

特集  震災・災害と高齢者

論文名

被災高齢者の生活問題と新しい地域生活
著者名

峯本佳世子

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 28(1):50-57,2006
抄録 本稿では,阪神淡路大震災の被災地・神戸市の復興プロセスにおける高齢者の生活問題とその支援体制の試みを取り上げ,今後,災害における高齢者の支援施策の参考とすべき方法を探ることを目的とする.まず,被災地・神戸市の復興状況を時系列でみながら,それぞれの時期に伴う高齢者の生活問題と支援体制の変化を概観する.次に,神戸市で被災地の高齢者対策として4年間試行した地域見守りシステムを,見守り支援者3者を対象に実施したアンケートの調査の報告をとおし検証する.調査では,地域においてこのシステムが少しずつ認知され,高齢者自身および援助を必要とする地域住民に効率的,効果的に生活支援がなされていること,また安心して暮らせる地域ネットワークづくりのきっかけとなっていることを明らかにした.最後に,新しい生活を始めた高齢者と再生になった地域の課題と取り組み,地域見守りシステム構築の意義を述べたい.

 

論文名

新潟県中越大震災における要支援・介護高齢者に対する危機管理の実態と課題
著者名

岡田直人,白澤政和,橋本 力,朝野英子,鄭 尚海,堂薗裕美,増田和高,三谷勇一

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 27(1):65-73,2005
抄録 本研究の目的は,新潟県中越大震災において要支援・介護高齢者がいかに支援を受けたかを明らかにすることで,災害弱者に対する危機管理のあり方についての課題と介護保険制度の成果を明らかにすることである.震災後に行われた質的調査および量的調査の結果,介護保険制度により居宅サービスを利用する要支援・介護高齢者に対しては,ケアマネジャーが一人ひとりにケアプランを作成することで,フォーマルとインフォーマルからなる社会資源のネットワーキングが構築され,災害時には安否確認に駆けつける者が存在するようになり,ケース担当する要支援・介護高齢者の安否確認が速やかに終了していることが明らかとなった.しかしながら,安否確認など行ったケアマネジャーへの財政的支援に課題があることも明らかとなった.

 

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