原著論文 | |
論文名 | 中高年者の主観年齢に関する規定要因の考察 ― エイジレス人間との比較において ― |
著者名 | 黒田 文 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):295-302,2005 |
抄録 | 中高年齢層の主観年齢(自己に対する心理的な年齢イメージ)が暦年齢よりも若いことは,欧米の社会老年学の分野で取り上げられている.実際の年齢よりも自分を若くみなす,つまり,暦年齢よりも低い年齢イメージをもつことは自己若年視とよばれるが,わが国では中高年齢層の主観年齢や自己若年視傾向の規定要因を探る研究は乏しい.他方,本人の暦年齢よりも若く見えると他者から評価される人は,エイジレス人間ととらえられているが,彼らの年齢同一化の現象を規定する要因についても研究が蓄積されていないのが現状である.そこで,本研究では,わが国における中高年齢層の主観年齢の規定要因に関してエイジレス人間とみなされる者との比較を通じて考察した. |
論文名 | 日本における前期高齢女性の家族以外の身近な他者との交流 |
著者名 | 大森 純子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):303-313,2005 |
抄録 | 本研究の目的は,前期高齢女性の家族以外の身近な他者との交流関係について,前期高齢女性にとっての意味に基づき,質的記述的にその特徴を明らかにすることである.理論的サンプリングにより,65〜79歳の女性13人に半構造的インタビューを行った結果,『気遣い合い的日常交流』における相互行為とその目的によって特徴づけることができた.前期高齢女性は,同年代の境遇を分かち合い,互いの日常に関心を寄せ合いながらも,互いの尊厳を侵さないよう適度な距離感を保ち合い,日常的な交流を継続させる相互行為を通じて,自分の居場所を見いだし,今日を生きる意欲を得ト,いまの自分を確かめることができ,日々をつないで自分なりの人生を生きることができていた.前期高齢女性にとって,この交流関係は,自身の人生の質を高めるための手段であると考えられ,日本人的社会関係の理解,および,保健福祉活動に関する示唆を得ることができた. |
論文名 | 都市部の中高年者におけるボランティア活動のニーズの分析 |
著者名 | 小林江里香,深谷太郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):314-326,2005 |
抄録 | 中高年におけるボランティア活動のニーズの実態と,回答者の属性とニーズとの関係を検討した.東京都練馬区において無作為抽出された60〜74歳に対して郵送調査を実施し,628人より回答を得た.分析の結果,活動内容については,高学歴者ほど仕事等で得た知識・技術を教えるなどの知識提供型活動へのニーズが高いことが示された.さらに,「活動内容(4水準)」「活動頻度(3)」「活動場所までの距離(3)」「有償性(3)」「知人の勧誘(2)」の5要因についてのコンジョイント分析により,性・学歴にかかわらず,頻度が少ない(月に1,2回),歩いていける距離,活動費用の自己負担がない条件が好まれることが示された.ただし,好まれる活動内容や各水準が好まれる程度には性や学歴による違いがあり,高学歴男性は活動頻度が少ないことや,謝金が支払われることにより敏感に反応し,活動への参チモ向が高まる傾向がみられた. |
論文名 | 超高齢期における身体的機能の低下と心理的適応 |
著者名 | 権藤恭之,古名丈人 ,小林江里香 ,岩佐 一 ,稲垣宏樹 ,増井幸恵 ,杉浦美穂 ,藺牟田洋美 ,本間 昭 ,鈴木隆雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):327-338,2005 |
抄録 | 本研究の目的は,超高齢期の特徴と考えられる身体的機能の低下とそれに対する心理的適応の維持を検証することであった.まず第1に前期・後期高齢者および超高齢者を対象として老研式活動能力指標,握力,疾病数といった客観的機能側面と主観的健康感,PGCモラールスケールといった主観的心理側面の指標の年齢群による違いを検討した.その結果,客観的機能側面では加齢に伴った明確な低下が観察されたが,主観的心理側面ナは加齢の影響は弱かった.第2に客観的機能側面が主観的心理側面に与える影響の年齢群による違いを検討した.その結果,主観的健康感および主観的幸福感に対して客観的機能側面が与える影響は,超高齢者群で減弱していた.これらの結果は超高齢期には,日常生活機能や身体機能の低下が顕著になる一方,それらの低下に対する補償が十分に機能し,心理的適応が進むことを示唆するものであった.今後,この適応プロセスを明らかにし,心理的適応を促進することが,心身の虚弱が進行する超高齢期におけるサクセスフルエイジングにとって重要であると考えられた. |
資料 | |
論文名 | 特別養護老人ホーム介護スタッフのユニットケア環境移行後のバーンアウトの検討 |
著者名 | 田辺毅彦,足立啓,大久保幸積 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):339-344,2005 |
抄録 | 存の回廊型大規模特養ホームをユニットケアに環境移行した後に,介護スタッフの心身状態のストレスがどのように変化するのかバーンアウトの視点から検討することを目的とした.調査は,北海道のA特養ホームで行われ,環境移行が終了した2002年10月とその1年半後の2004年3月に,23人の介護スタッフを対象に,バーンアウトおよびストレス内容とストレス対処についての質問紙調査と補足的な面接調査を実施し,結果の比較を行った.その結果,環境移行後にバーンアウトおよびストレス内容得点の増加がみられ,それらに対するストレス対処の方策が組織システムよりも個人の発散によって解決される度合いが高まることが明轤ゥになった.面接調査では,ユニットケア環境整備を良好に継続するために,ユニット同士の孤立を解消し,職場システムによる問題解決の環境作りの促進などが必要であることが示唆された. |
論壇 | |
論文名 | 高齢者と家族研究の課題 |
著者名 | 直井 道子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年社会科学, 27(3):345-350,2005 |
抄録 | ?高齢者にとって「家族とはだれか」が明確ではなく,調査では同居者と子どもを中心に把握していることが多い.子どもの側からの調査によって,高齢者の親子関係をより多角的にとらえる必要がある.?既婚子と同居か別居かによって部分的に異なった質問を用意する必要があり,そのためにより多くのサンプルが必要になる.同別居も生活の分離度として把握するのがよい.?認知的機能が衰えている場合など,高齢者の情報から家族をとらえるのが困難なこともあり,逆に高齢者自身に聞くべきことを介護者に質問してすませている場合も多い.両方をつき合わせる努力が必要である.?家族は長期的に変化するもので,長期的研究が必要である.?このように高齢者と家族の研究に困難があるが,高齢者と家族をめぐる状況は変化のなかにあり,他のテーマをもつ人にとっても必要性が増している. |
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